行け! せんべろ探検隊。

千円でべろべろに酔える店を彷徨う、せんべろ探検隊ストーリーです。探検隊だから、時には、危険なまんべろも。いざ、せんべろ劇場へ! まぐまぐで、メールマガジンを発行してます。ほぼ週末に人気記事を発送してます。

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新世界『のんきや』(大阪)立ち飲み評論家、直次郎。

どて焼きとおでん。IMG_5355

 通天閣から、動物園前方面に僕たちは歩いていた。
「関西弁が飛び交ってて面白いの」と、埼玉から来ているかおりんが云った。
 みんな漫才師みたいなんだもの、とも。

 確かに、ボケとツッコミで話してる人って、お江戸にはあまりいない気がする。新幹線に乗って京都に向かっていた時、僕の後ろのカップルの会話が聞こえてきていて、名古屋を越えた辺りから、関西弁に変わるのが面白かった。
「お腹減ったね。なにか食べる?」と、女の子が云う。
「俺は暖かい珈琲が飲みたいな」と、眼鏡をかけたがっしりとした男の子が云う。
 それがどうだろう。京都が近づいてくると、
「弁当食べたいねんけど」と、男の子が云うと、
「さっき食べたとこやんか、もうろくじじいか!」と、女の子が云い返していた。
 とても、同じカップルとは思えないのである。
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 アーケードに並ぶ商店街は、店じまいが早いのかシャッターを下ろしているところが多かった。埃っぽい昭和の香がする商店街である。
「ここにしない?」と、かおりんが立ち止まって云った。
 見ると『のんきや』という、赤い暖簾がかかっている店がある。ディープ大阪の立ちのみ屋という風情である。なかなかいい。
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 店には、サラリーマン風の客が4、5人ほど。どて焼きとおでんが、湯気を立てていた。いい香が漂っていた。
 僕は、熱燗を頼む。かおりんは赤ワインを。もちろん、どて焼きとおでんもお願いした。
「兄さんたち、旅行かいな?」と、隣でビールを飲んでいるおじさんが話しかけてきた。ジャンパーを着た、ひとの良さそうなおじさんである。
「旅行は、あたしだけ。先輩に大坂を案内してもらってるの」と、かおりんが云った。
「よう、この店を見つけたなぁ。ええ、嗅覚してるで」
「いい香がしたから」と、かおりんが云った。
 熱燗と赤ワインが来た。かおりんが熱燗を注ぎ、
「有名な店なんですか?」と、尋ねた。
「新世界は串揚げと思てる人も多いけど、ここはええねん」
「よく、来られるんですか?」と、僕が訊いた。
「私は立ち飲み屋がすきで、全国を回ってるねん」
 おじさんは、直次郎と名乗り、ここはオススメや。と云った。どこか教師のような雰囲気のある人だと、僕は感じた。
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「千円でべろべろになれる、せんべろ探検してるんです」
「千円でべろべろかいな。ええなぁ、そやけどこの辺りは、女連れやと、冒険はきついねん」
「昼間やったら、おもろいねんけどなぁ」と、店主がどて焼きをトンと、カウンターに置きながら云った。
「どことは、言えんねんけど。明るいときにしとき。ええとこ一杯あんねん」と、直次郎さんが云った。

「教えて!」と、かおりんが云った。
 直次郎さんは、笑いながらメモに店名を書いて渡してくれ、燗酒を注文した。
「これは、秘密やで」と、ウィンクをしながらだ。ちょい、かっこいいではないか。
 で、どて焼きを食べると、これが旨い。
「美味しい!」と、かおりんもたちまち平らげてしまった。
「そやろ」と、直次郎さんも満足げである。
 僕たちは、ディープ新世界の立ち飲み屋について教えて貰う。なんだ深い話しだったように思うけど、僕は酔っていてほとんど覚えていない。どうも、ためである。
 直次郎さんに別れを告げ、僕たちは次の店を探検しに向かうのであった。
<記事 大坂せんべろ探検隊長 紙本櫻士@コピーライター 埼玉せんべろ隊長 かおりん@もつ命>
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のんきや
住所 大阪府大阪市浪速区恵美須東3ー4ー5
交通 大阪市営地下鉄動物園前下車、徒歩3分
   JR大阪環状線新今宮駅東出口から、徒歩5分
営業 9時から20時
定休日 水、第三火曜日
せんべろです。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
         沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG もーちゃん@トラベラー
         オーシタ@スリランカ アサミ@セレブ
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー ナホ@バイオリニスト
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス
軽井沢せんべろ隊長 かなこ@別名ミランダカー
旅人せんべろ隊長 ジョセフィーヌ@サンマーク
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一

新世界『づぼらや』(大阪)気になる巨大提灯。

新世界探検 その2IMG_5338

「山本どうしてる?」と、僕が訊いた。
「山本くんは、徳島で公務員してるよ」と、かおりんが云った。
「じゃぁ、モリトは?」
「出版社で編集長してる」
「リクルートで、みんなが会社回っていたのが昨日のことに思えるよ」
「ススムは?」と、僕が訊いた。
「東大の准教授らしいよ」
「会社やめて大学に入りなおして、ノーベル賞とるとか云ってたなぁ」
「毎日、学校で会ってたよねぇ。あの時は、山のように時間があったから」

 かおりんとも、長く会っていなかった。
 大阪に来たついでに、せんべろ探検をしたいと連絡があったのだ。彼女は、浦和せんべろ隊長なのだった。
 それから、何か事情もあるようだった。

「ここに立つと大阪観光してる、って感じになるよ」と、かおりんが通天閣を見上げながら云った。
 腕時計を見ると、7時を少し過ぎたくらいだ。辺りは、すっかり暗くなっていた。真冬の冷たい風が、かおりんの長い髪を揺らしている。コートに手を突っ込んだサラリーマンが、僕たちと同じように通天閣を見上げていた。
 平日だからか、人はまばらだった。
「寒いから、てっちりで燗酒を飲もうよ」と、僕が云った。
「ふぐ?」
「大阪では、てっちりなんだ。づぼらやってでかいフグの看板の店がある」
 実は、僕は一度も入ったことがない。ここから歩いてすぐの店だった。
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  店に着くと、白髪の太ったおじさんがひとりでビールを飲んでいた。テーブルには、ふぐさしが一皿置いてある。グレーのセーターを着て、黙ってグラスを傾けていた。人の良さそうな顔をしている。
 僕たちは、おじさんの隣のテーブルに座った。
 燗酒とふぐさしを女性店員に注文した。
 はしご酒前提のせんべろ探検だから、さっと一杯飲んで次の店に行く予定だし。

「かおりんの会社って難波だっけ」
「名古屋と、福岡にもあるよ」
「そりゃ、行くとうまいものが食えるな」
「出張はそれが楽しみなんだよ」
「ススムは、ノーベル賞獲れそうなの?」
「知らない。でも、まだ本気らしいのよ。笑っちゃうけど」
「結婚してるの?」
「どうなのかしら?」
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 燗酒が来た。
 僕は、かおりんのお猪口に酒を注ぐ。で、返杯である。
「昭和の香りがするね。客も昭和だ」
「私たちだって、昭和じゃない」
 そりゃそーである。
 女性店員が、ふぐさしをテーブルに置いた。僕は、ふぐの天ぷらを追加した。
「新宿アルタの近くに、ふぐを食わせる店があるんだ」
 彼女は、黙って酒を飲んだ。
「友だちがやってる」
「知ってる人?」
「知らないと思う。ススムと同じ東大だけど、中退してふぐ料理作ってる。今度寄ってみてよ。旨いよ」
 僕は、燗酒のお代わりをした。もう少し、熱くして欲しいと頼む。
「大阪は初めてだけど、面白い わ。テーマパークみたい」
 彼女は、微笑むと残りの酒を注いでくれた。
 確かに、ここはそんな街かもしれない。新世界などは、独特の雰囲気がある。
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「失踪したおばさんの話しだけど」
 一軒目のだるまで、彼女が話しかけたおばさんのことだった。
「おばは、お金持ちなのよ」
「先天的なお金持ち?」
「後天的にね。頑張ったのよ。会社起こして」
「会社は、うまくいってるの」
「たぶんね。失踪と会社は関係なさそうなんだ」
「駆け落ちとか」
「まさか。でも、とても心配なの」
 そう云うと、彼女は遠くを見るような表情になった。
 熱燗のお代わりが来た。
 ふぐの唐揚げを食べてみると、あっさりと旨い。僕は、燗酒をひとくち飲んだ。
 小幸福である。
「今夜は、飲もう。久しぶりなんだし」
 彼女は、僕に熱いお酒を注ぎながら云った。

<記事 大阪せんべろ探検隊長 紙本櫻士@コピーライター 埼玉せんべろ探検隊長 かおりん@もつ命>
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づぼらや 新世界店
住所 大阪府大阪市浪速区恵美須東2ー5ー5
電話 050ー5798ー7550
交通 地下鉄御堂筋線動物前駅5番出口から徒歩5分
   地下鉄堺筋線恵比寿駅から徒歩5分
   JR環状線新今宮駅から徒歩5分
営業 11時から23時(月から日)
定休日 元日
ひとり二千円しないくらいでした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
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大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
         沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG もーちゃん@トラベラー
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東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
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下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
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土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
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全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス
軽井沢せんべろ隊長 かなこ@別名ミランダカー
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撮影 田原慎一

新世界『だるま』(大阪)私をディープ大阪に連れてって!!

埼玉せんべろ隊長来阪!!IMG_5315

「さらわれたりしない?」
「たまにはな」
 と、僕が云うとかおりんは不安げな顔をした。
 僕たちは、新世界へ。
 阪神の帽子を被ったおじさんが自転車で何やら歌いながら移動してたり(本当にいる)、賭け将棋をしてたり、派手なパンチパーマのおばさんが笑ってたり、とディープ大坂劇場の俳優たちは、いつもいい仕事をしてくれている。

「いっぱい飲まへん?」と、商店街を歩いていると茶髪の若いねーさんが声をかけてきた。『酒』と白抜きで書かれている前掛けをしているおねーさんだ。
「また、あとでな。観光してるねん」と、僕が答えると、彼女はニッコリ笑って手を振ってくれた。

「どこへ行きたい?」と、かおりんに尋ねると、
「二度漬け禁止ってのに行きたい」
 と云うので、一軒目は『だるま』に行くことにした。
「立ちのみの店多いねぇ」
 かおりんは、商店街を眺めながら云った。
「朝から立ちのみ屋やってるんだ」
「だるまは、立ち飲みなの?」
「あそこは椅子がある」
 通天閣をバックに記念撮影をすると『だるま』へ向かった。通天閣の麓にある店なんだ。
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 店に入ると、3人の若いサラリーマンが順番を待っていた。
 以前来たときは、店外まで行列ができていた。今日は、平日なので客が少ないのだろう。
「なんで、ひとりで大坂に来たの?」
「いろいろあるのよ」と、かおりんは微笑んで云った。
 いろいろってなんだろう? 
 とは、思ったけど、いまは聞かないでおいた。すると、
「なんで、分けを聞かないの?」と、かおりんが云った。
「聞いちゃいけないのかと」
「そうねぇ、お酒飲んで酔ったら話せるかな」
 どうも意味深である。
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 僕たちの順番が来た。
 僕は、ビール。かおりんが芋のお湯割りを頼んだ。それから、串揚げの盛り合わせとどて焼きも。
「なんで大坂にいるんだろう? って思うよ、こうして飲んでると」
「はいよ」と、どて焼きが来た。
 早速、かおりんがひとくち食べた。
「赤羽で食べたドテとは、違う味だわ」と、かおりんが云った。
 東京でせんべろ探検をしたときは、醤油味だったらしい。
「大坂にある人を探しに来たの」
「トラブル?」
「ちょっと、旅行に行くって家を出て行ったんだけど」
 そう云うと、かおりんはお湯割りをひとくち飲んだ。
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 串揚げが来た。
 お腹が空いていた僕たちは、まずは食べることにした。
 かおりんは、二度漬け禁止が面白いらしい。
 僕は、キャベツをつまんでソースにつけた。キャベツは、食べ放題なんだ。
「もしかして男の人?」
「叔母なの」
 子どもの頃から大好きだった叔母だと云う。大学で中国語を教えていて、独身だそうだ。一ヶ月前、突然、失踪したらしい。
「できることがありそう?」
「そうね。頼むことがあるかもしれない」
 かおりんは、黙ってなにか考えているようだった。
「いそうな場所は、大体、想像がつくんだ」
 僕は、それ以上尋ねないことにした。
 いえないことだってあるんだ。訊かない方がいいことだって・・・。
「今夜はせんべろ探検を楽しみましょう」
 そう云うと、かおりんはお湯割りをお代わりした。
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「ビールは?」
「ビール、苦手なんだ」
 かおりんは、串揚げをソースにつけて頬張った。
 僕も続けて食べる。甘めのソースが美味しい。
「上野で会ったよね」と、かおりんが呟くように云った。
「あの時は、すっぽんを食べた」
 あれから、何年経っただろう。
「時が経つのって早いよね。叔母さんも、やりたいことがあったみたい」
 僕たちは、お酒を飲み干し、次のせんべろ探検に行くことにした。
「次は、どこに行きたい?」
「もっと、ディープなせんべろ屋かな」
 新世界のせんべろは続く。
<取材 大坂せんべろ探検隊長 埼玉せんべろ探検隊長 記事 紙本櫻士>
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元祖串かつ だるま 新世界総本店
住所 大阪府大阪市浪速区恵美須東2ー3ー9
電話 06ー6645ー7056
交通 市営地下鉄堺筋線 恵比寿町駅3番出口から徒歩6分
   市営地下鉄御堂筋線 動物園前駅5番出口から徒歩5分
営業 11時から21時
定休日 無休
せんべろでした。
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         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
         沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG もーちゃん@トラベラー
         オーシタ@スリランカ アサミ@セレブ
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー ナホ@バイオリニスト
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス
軽井沢せんべろ隊長 かなこ@別名ミランダカー
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一

両国『ゆきだるま 両郷部屋』(東京)久しぶりのジンギスカン。

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 アライが港署に引っ張られたのは、大晦日の夕方だった。
 ノックの音がして、探偵事務所の扉を開けるとお馴染みの身分証明書をかざし、男たちが部屋に入ってきた。白髪交じりの年長の男が先に入り、アライの顔を凝視した。
 若い刑事は、ドアの前に立っている。まぁ、逃げられないようにということだろう。

「今日もお仕事ですか?」と、年長の男が慇懃無礼な口調で云った。
「警察には、大晦日はないみたいだな」
「悪いやつが多くてね」と、白髪の男が云うと、ドアの前に立っている背の高い刑事が薄ら笑いを浮かべた(ように見えた)。それは自嘲気味の笑いなのかもしれない。
「オクムラカオリが、殺されたのは知っていますね」
「新聞で読んだよ。気の毒なことだ」
「オクムラが、外国で殺されたことは?」
「そいつは、知らない」
 おそらくアルゼンチンで逃げられなかったのだろう。まったく、気の毒な元夫婦だ。
「そういう態度ね」
 白髪の刑事が目配せすると、若い刑事がアライのベルトを後ろから右手で握った。
「任意だろう」と、アライが云うと
「ほう、面白いこと云うじゃないか」と、白髪の刑事がアライのレバーにいっぱつ入れた。どこが急所かを知り抜いた狡猾なパンチだ。
 こういう権力を持ったヤカラには、抵抗はしないほうがいい。経験ということだった。

 港署の取調室にはグレーの事務机がひとつと、安っぽいパイプ椅子が二つ並べてあった。アライは、奥の椅子に座って待つように云われた。座ると、ギシギシと嫌な音がする椅子だ。窓もない息苦しい部屋だった。
 暫くすると刑事がひとり入って来た。二人じゃないところを見ると、任意同行は本当らしい。
 刑事は机に座って、アライの向かいに座った。
「大晦日にご足労だね」と、刑事が云った。
「お仲間に、いっぱつ入れられたよ」
 アライは、お腹をさすりながら云った。
 まだ、レバーが傷んでいた。アライにいっぱつ入れた白髪の男は、昔ながらの古い刑事だろう。人の弱みや、証拠が残らない痛めつけ方に精通している。だけどそんな刑事は絶滅はしない。必要だからだ。
「アライさんですね。張と云います。そんな報告は聞いてませんが、伊東くんは何か勘違いでもしたのかな」
 体格のいい年配の張刑事は、とぼけたことを云った。ネクタイの趣味もいい。腕に機械式のエポスをしていた。課長くらいだろうか。
「話すことはないよ。帰らせてくれ」
「なら、任意を重要参考人としていてもらおう」
 ドアが開いて、先ほどの若い刑事が入って来た。黙って、ドアの近くに立っている。
「訊きたいことが山ほどあるんでね」と、さっきとは違う凄みのある口調で張刑事が云った。
「俺は、何も関わっちゃいないぜ」
「奥さんが殺された日だよ。おまえとオクムラが何をしていたかじっくり訊きたい」
 そう云うと、張刑事は部屋を出て行った。

 そこからは若い刑事と交代だった。
 それから刑事が代わる代わる質問をくりかえした。表情が何もないんじゃないかと、思われる刑事もいた。時には暴力的な刑事も。
 刑事とアライが座っている事務机は、刑事の側には足を入れる事ができるが、アライの側は、スチールの板があって足を入れる事ができないようになっていた。膝があたる二カ所の塗装が剥げているのは、同じように何時間もここで取り締まりを受けたヤツらがいるからだろう。それを見てアライはうんざりした。
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 帰されたのは、年が明けて5日のことだ。
 連日、窓のない部屋での尋問は気が滅入ったが、ある日、鉄格子の窓がある部屋に通された。
 その日は、お茶も出て、若い刑事とほぼ雑談だった。で、突然「帰っていい」と、告げられ港署から追い出された。
 適正な取り調べをした警察のアリバイ作りだろう。よくあることだ。
 帰ると、事務所とマンションに家捜しをした形跡があった。ヤツラは家捜しが重要だったのかもしれない。
 俺は泳がされてる。
 とりあえずシャワーを浴びた。
 警察の飯は、いわゆる臭い飯ではないが(ヨウグルトとかオヤツが付く)、臭い飯というのが似合う。どこか臭いんだ。
 腹ごなしに両国にあるジンギスカンでビールを飲もう。と、馴染みの飲み屋に顔を出すことにした。風が冷たい。夜空に月がひとつでていた。
 
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「よう」と、店主に挨拶をして中に入ると、ジンギスカンが焼ける匂いが漂っていた。お腹がぐぅと反応する。
 アライはビールと肉を注文した。
「ひどい顔だな」と、店主が云う。
「そうか」
 さっき鏡で髭を剃るときは、そんな風には見えなかったが、確かに俺はひどく疲れていたんだと思う。
 店主は、自分のビールを注ぎアライのテーブルに座った。
 とにかく乾杯だ。で、ぐっと、半分以上を飲んだ。旨い。
「精をつけないとな」
 サービスだ、と云うと、つけ麺を店主が追加した。
「明けましておめでとう」
 ああ、正月だったな。とアライは思った。
 店主に携帯電話を借りて、チヅルに連絡を入れた。生憎、留守電になっていた。
 当分、事務所には来るな、と伝言を残した。
 アライは、肉を熱くなった鉄板に載せ、ビールを飲んだ。
<取材 アラピー@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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ゆきだるま 両国部屋
住所 東京都墨田区両国3ー24ー1 尾崎ビル3F
電話 03ー6751ー9929
交通 JR両国駅東口より徒歩1分
営業 17時から23時20分(火曜日から日曜日)
定休日 月曜日
ひとり3000円くらいです。ビールにジンギスカンが旨い。
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         オーシタ@スリランカ アサミ@セレブ
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浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
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全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
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撮影 田原慎一

枚方『そば切り 天笑』(大阪)ミシュランの蕎麦。

酒と蕎麦と幽霊。IMG_5176


 幽霊を連れて、蕎麦を食べに行った。
 チサトという若い女の幽霊だ。やり残したことで、成仏できないと言う。
「やり残したことってなんなの?」
 そば切り『天笑』のテーブル席に着くと、僕は質問をした。
「いろいろあんのよ幽霊にも」と、チサトははぐらかす。
 僕は、お酒を二種類注文した。ひとつは、ちさとの分である。
「ふたつ同時に出してください。飲み比べたいから」と、僕は怪訝そうにしている店員に云った。店員にはチサトが見えないから。
 幽霊が、お酒を飲んだり食べたりすることも、みんなは知らない。
 でも、お供えするってことは、実は、分かっているのかもって思うことがある。

 去年の秋頃、チサトが化けて出だした。
 生前は、知り合い程度だったが、死んでからは毎日のように顔を出す。僕の事務所に来てパソコンでなにやらしてるし、ソファーに寝転がって本を本でたりもする。ことによると、生きているんじゃないかと、錯覚を覚えるほどだった。
「気が散るから、消えてくれない」と僕が言うと、本当に消えるから幽霊なんだろう。たぶんね。
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 お酒が来た。
 僕のアテはメザシ。チサトには漬け物がついていた。
「蕎麦を打ってゆであがるまで、酒を飲んで待ってるのが粋ってもんだ」
「そうなの? でも、お酒を飲んで待つってのはいいわね」
 僕が、チサトのぐい飲みにお酒を注ぐと、彼女は美味しそうに杯を傾けた。
「浅草に、大黒屋って蕎麦屋があるんだ。あそこは、蕎麦がでてくるまで酒を飲みながら鍋を食べて待つ。なかなかでてこない。蕎麦を食べに来たんだけど、蕎麦で〆る勢い」
「蕎麦を食べに来てるのに?」
「そう、それくらいでてこない。で、蕎麦の量ががちょっぴりなんで、お代わりしたくなるけど、もはやできない。お代わりなんかしたら、また、鍋からやり直しだ」
「ここもそう?」
「違うけど、酒を飲みながらって待つのはいいもんだよ。江戸時代は、蕎麦屋は飲み屋だったんだ。時代劇で、蕎麦屋で飲んでたりするだろう」
「くだらないことに詳しいのね」と、チサトは手酌でぐい飲みに酒を注いだ。
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 店員が来て、そろそろお蕎麦をお持ちしましょうか? と、僕に尋ねた。
 鴨汁蕎麦を二つ、僕は注文した。
「大盛りですか?」
 いえ、大盛りではなくて二つね。
「なんか申し訳ないな」と、チサトが言った。
「いいんだよ」と僕が言うと、
「分かりました」と、店員が答えた。
 なんか、話しがつながっているのが僕だけ可笑しい。
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「前から思ってたんだけど、幽霊が飲んだり食べたりした後って、気が抜けたような味がするんだ。食べ物の魂がなくなるからかな」
「そんなの分かんないよ」
 そう言うと、チサトは酒をお代わりした。
 気づかない店員に、僕がお代わりを伝える。仕方なく、チサトが飲んだ酒を、僕も飲む。やっぱり、気が抜けているように思う。
「今年の抱負だけど」
「幽霊に抱負なんてあるの?」
「やり残したことを、ひとつひとつ片づけるんだ」
「幾つもあるのかよ」
 これでは当分、付きまとわれそうだ。やれやれ。
「牡丹灯籠って落語で、幽霊に憑かれて死んじゃう話しがあるだろ」
「そんなの知らないよ」
「そんなこともあるのかなって思ってさ」
 取り憑かれて死にたくはない。
 チサトは、ふーんって言いながら、僕の杯をひょいと奪って飲み干した・
 あ、っと言うと、へへへと笑う。
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「蕎麦屋で飲むのも、やり残したことかな」
 こいつに取り憑かれて死ぬなんてことは、なさそうだな、と笑顔を見ながら思った。
 僕は、旨い鴨汁蕎麦と、気の抜けた鴨汁蕎麦を食べて(とはいえ、美味しい)店を出た。
 チサトに話しかけようと振り向くと、姿がない。
 さっさと、成仏してくれよ。と思ったけど、それはなさそうだ。たぶん。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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そば切り 天笑
住所 大阪府枚方市岡南町10ー30
電話 0728ー46ー7166
交通 京阪本線枚方市駅から徒歩5分
営業 11時から14時30分 17時30分から19時
定休日 水曜日・木曜日
ひとり2000円くらいでした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
         沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG もーちゃん@トラベラー
         オーシタ@スリランカ アサミ@セレブ
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー ナホ@バイオリニスト
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス

※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一

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