後楽園でプロレスを10487056_897759920316540_1810427711_n

 それ以来、オクムラはアライとせんべろ屋で飲むようになった。
 バーで飲むこともあったが、大抵は、せんべろ屋だ。今夜は、水道橋にある立ち飲み屋だった。プロレス好きなアライが、後楽園でプロレス観戦をする前に、一杯ひっかけて行く店だ。プロレスを観に行くと云うと、オクムラがついてきたのだ。

「女房は、酔っ払いが嫌いなんだ」と、オクムラが云った。
 カウンターに手をついて、いつものように指をトントンとリズムを取っていた。
「酔っ払いは、誰でも嫌いだろう」
「貧乏な酔っ払いが嫌いなのさ」
 オクムラはそう云うと、ビールを飲んだ。
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「思うんだが、なぜ、俺と飲むんだ。貧乏だし、いく店はせんべろ屋ばかりだ。君は満ち足りた生活をしてるんだろう? 住んでる場所はしらないが、白金あたりで暮らして毎日テニスでもしているくらいに思ってる」
「刺し身がなんでも500円以下だ。カンパチと玉子焼きも頼もう」
 サラリーマンの集団が入ってきて、店が混み出した。テーブル席につき、ビールで乾杯をしてる。カウンターも常連らしき人で賑わっていた。
「やつらは金をいまいくら持っているかなんて知らないんだ。確かに、テニスをしたりゴルフをしたり、ホテルのバーで酒を飲んだりしてるさ、暇なんだよ。でも、暇をつぶすのは、本当に辛く大変なんだ。やつらはそう思ってる」
「俺には分からん話しだ」
 ひがみかも知れないが「分かりたくもない」と、アライは思った。
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 アライは、オクムラをアルコール依存症だと思っていた。大抵、一杯飲むととまらなくなる。でも、アライと飲む限り、オクムラは乱れることはなかった。ことによると、ある程度、克服できたのかもしれない。
「なぜ、プロレスが好きなんだ。面白いのか?」と、アライが尋ねた。
「子どもの頃『ゴング』ってプロレス専門誌があって、何度か買って読んでたら、好きになってたな。俺の友だちに、ジャイアンツの帽子を親に買って貰ったのがきかっけで、巨人ファンになったやつがいる。つまり、そういうことだ」
「立ち飲み屋は、落ち着くよ」と、アライが云った。
「次は、静かなバーで一杯やろう」
 アライは生返事をして、ビールのお代わりをした。
「金はあるし、美人の奥さんもいる、十分しあわせじゃないか」と、アライが云った。
「なぁ、頼みがあるんだ」と、オクムラが云った。
 アライもビールのお代わりを注文した。
「俺の鞄を預かってほしい。何かあったときの、保険なんだ」と、オクムラが云った。
「仕事の依頼じゃなく、友だちとしてなら預かろう」

 そろそろ試合の時間だった。相撲取りからプロレスラーに転向した、曙がでる試合だ。ふたりは勘定を済ますと店を出て、後楽園に向かった。歩きながら、アライは不吉な予感がしていた。鞄はその象徴だ。
 そうならないことを祈ろう。と、アライは歩きながら思っていた。
<取材 アラピー@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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魚升(ウオマス)
住所 東京都千代田区三崎町2ー21ー11 ゑびすビル1F
電話 03ー3221ー8860
交通 水道橋から徒歩3分
営業 17時から23時
定休日 日・祝
ひとり千円ちょっと。せんべろ屋です。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@元女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス

※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一