行け! せんべろ探検隊。

千円でべろべろに酔える店を彷徨う、せんべろ探検隊ストーリーです。探検隊だから、時には、危険なまんべろも。いざ、せんべろ劇場へ! まぐまぐで、メールマガジンを発行してます。ほぼ週末に人気記事を発送してます。

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両国

両国『ゆきだるま 両郷部屋』(東京)久しぶりのジンギスカン。

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 アライが港署に引っ張られたのは、大晦日の夕方だった。
 ノックの音がして、探偵事務所の扉を開けるとお馴染みの身分証明書をかざし、男たちが部屋に入ってきた。白髪交じりの年長の男が先に入り、アライの顔を凝視した。
 若い刑事は、ドアの前に立っている。まぁ、逃げられないようにということだろう。

「今日もお仕事ですか?」と、年長の男が慇懃無礼な口調で云った。
「警察には、大晦日はないみたいだな」
「悪いやつが多くてね」と、白髪の男が云うと、ドアの前に立っている背の高い刑事が薄ら笑いを浮かべた(ように見えた)。それは自嘲気味の笑いなのかもしれない。
「オクムラカオリが、殺されたのは知っていますね」
「新聞で読んだよ。気の毒なことだ」
「オクムラが、外国で殺されたことは?」
「そいつは、知らない」
 おそらくアルゼンチンで逃げられなかったのだろう。まったく、気の毒な元夫婦だ。
「そういう態度ね」
 白髪の刑事が目配せすると、若い刑事がアライのベルトを後ろから右手で握った。
「任意だろう」と、アライが云うと
「ほう、面白いこと云うじゃないか」と、白髪の刑事がアライのレバーにいっぱつ入れた。どこが急所かを知り抜いた狡猾なパンチだ。
 こういう権力を持ったヤカラには、抵抗はしないほうがいい。経験ということだった。

 港署の取調室にはグレーの事務机がひとつと、安っぽいパイプ椅子が二つ並べてあった。アライは、奥の椅子に座って待つように云われた。座ると、ギシギシと嫌な音がする椅子だ。窓もない息苦しい部屋だった。
 暫くすると刑事がひとり入って来た。二人じゃないところを見ると、任意同行は本当らしい。
 刑事は机に座って、アライの向かいに座った。
「大晦日にご足労だね」と、刑事が云った。
「お仲間に、いっぱつ入れられたよ」
 アライは、お腹をさすりながら云った。
 まだ、レバーが傷んでいた。アライにいっぱつ入れた白髪の男は、昔ながらの古い刑事だろう。人の弱みや、証拠が残らない痛めつけ方に精通している。だけどそんな刑事は絶滅はしない。必要だからだ。
「アライさんですね。張と云います。そんな報告は聞いてませんが、伊東くんは何か勘違いでもしたのかな」
 体格のいい年配の張刑事は、とぼけたことを云った。ネクタイの趣味もいい。腕に機械式のエポスをしていた。課長くらいだろうか。
「話すことはないよ。帰らせてくれ」
「なら、任意を重要参考人としていてもらおう」
 ドアが開いて、先ほどの若い刑事が入って来た。黙って、ドアの近くに立っている。
「訊きたいことが山ほどあるんでね」と、さっきとは違う凄みのある口調で張刑事が云った。
「俺は、何も関わっちゃいないぜ」
「奥さんが殺された日だよ。おまえとオクムラが何をしていたかじっくり訊きたい」
 そう云うと、張刑事は部屋を出て行った。

 そこからは若い刑事と交代だった。
 それから刑事が代わる代わる質問をくりかえした。表情が何もないんじゃないかと、思われる刑事もいた。時には暴力的な刑事も。
 刑事とアライが座っている事務机は、刑事の側には足を入れる事ができるが、アライの側は、スチールの板があって足を入れる事ができないようになっていた。膝があたる二カ所の塗装が剥げているのは、同じように何時間もここで取り締まりを受けたヤツらがいるからだろう。それを見てアライはうんざりした。
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 帰されたのは、年が明けて5日のことだ。
 連日、窓のない部屋での尋問は気が滅入ったが、ある日、鉄格子の窓がある部屋に通された。
 その日は、お茶も出て、若い刑事とほぼ雑談だった。で、突然「帰っていい」と、告げられ港署から追い出された。
 適正な取り調べをした警察のアリバイ作りだろう。よくあることだ。
 帰ると、事務所とマンションに家捜しをした形跡があった。ヤツラは家捜しが重要だったのかもしれない。
 俺は泳がされてる。
 とりあえずシャワーを浴びた。
 警察の飯は、いわゆる臭い飯ではないが(ヨウグルトとかオヤツが付く)、臭い飯というのが似合う。どこか臭いんだ。
 腹ごなしに両国にあるジンギスカンでビールを飲もう。と、馴染みの飲み屋に顔を出すことにした。風が冷たい。夜空に月がひとつでていた。
 
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「よう」と、店主に挨拶をして中に入ると、ジンギスカンが焼ける匂いが漂っていた。お腹がぐぅと反応する。
 アライはビールと肉を注文した。
「ひどい顔だな」と、店主が云う。
「そうか」
 さっき鏡で髭を剃るときは、そんな風には見えなかったが、確かに俺はひどく疲れていたんだと思う。
 店主は、自分のビールを注ぎアライのテーブルに座った。
 とにかく乾杯だ。で、ぐっと、半分以上を飲んだ。旨い。
「精をつけないとな」
 サービスだ、と云うと、つけ麺を店主が追加した。
「明けましておめでとう」
 ああ、正月だったな。とアライは思った。
 店主に携帯電話を借りて、チヅルに連絡を入れた。生憎、留守電になっていた。
 当分、事務所には来るな、と伝言を残した。
 アライは、肉を熱くなった鉄板に載せ、ビールを飲んだ。
<取材 アラピー@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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ゆきだるま 両国部屋
住所 東京都墨田区両国3ー24ー1 尾崎ビル3F
電話 03ー6751ー9929
交通 JR両国駅東口より徒歩1分
営業 17時から23時20分(火曜日から日曜日)
定休日 月曜日
ひとり3000円くらいです。ビールにジンギスカンが旨い。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
         沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG もーちゃん@トラベラー
         オーシタ@スリランカ アサミ@セレブ
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー ナホ@バイオリニスト
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス

※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一

両国『花の舞』(東京)土俵のある飲み屋。

ハンバーガーはやめてくれ。12212274_922577534501445_652357656_n

 アメリカのポートランドに20年以上出張しているトシと、マレーシアの10年以上出張しているマサユキと、上海にもう何年いるか分からなくなったユウジが、同時に日本に帰ってきた。
 四半世紀会っていない友人たちだ。学生の頃は、毎日のように会っていたのにね。
 どこに行こう? とトシにメールで訊くと、
 日本らしい場所に行こう。となり、両国で飲むことになった。
 両国駅で懐かしいトシの顔を見つけ「よう」と云うと、
「ハロハロ」と、手を差し伸べ握手をした。ぐっとくる力強い握手は、海外生活の長さを感じさせる。チノパンにグレーのセーターを着ている。見かけは25年前と変わらないように思えた。でも、どこか異国の香りを漂わせていた。
「ハンバーガーとかステーキは、やめてくれ」と、トシが云う。
「あえて、日本のを食べてみるとか?」
「よせよ」

「Hai!」と、マサユキが合流し(今度はハイタッチだった。僕のハイタッチは、どこかぎこちないのだ)、ユウジもほどなくやって来た。
「ずいぶん会ってないけど、久しぶりって感じでもないな」と、ユウジが云った。
 さっきまで、出社していたユウジはスーツを着ていた。ネクタイは落ち着いたブルーだ。マサユキは、ジーンズにチェックのエンジっぽいシャツ。工学部の学生だった頃と、ほぼ、同じ格好である。
「水泳は続けてるのか」と、僕がユウジに訊くと
「平泳ぎを続けてるよ」と、ユウジが答えた。
 平泳ぎの選手で、結構、いい線いってたんだ。平泳ぎは、足の形と足首の柔らかさで決まる。早いヤツは、平泳ぎ用のカラダを持って生まれくるんだよ。と、ユウジが云っていたのを、いまもで覚えている。
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「国技館みたいな店だな」と、マサユキが云った。
 予約していた居酒屋『花の舞』に入ると、中央に土俵が据えつけてあった。僕たちは枡席に座る。
「子どもは、いくつになった?」と、僕はトシに訊いた。
「高校生と大学生だ。アメリカは入試もないし、授業料も無料なんだ。のびのびやってるよ。問題は、下の子が、日本語を忘れてきていることだな」
「家では日本語?」
「そうだけど、子どもたちは英語の方が話しやすい」
 母親が寂しがっていると云う。そりゃそうだろう。と、思う。

 ビールが来て乾杯をした。
「土俵の前で飲むと、日本に来たって思うよ。日本人だって、土俵の前で飲まないだろうけどね」と、ユウジが云った。
 トシが刺し身の盛り合わせを頼んだ。と、ちゃんこ鍋。
「ハンバーガーは?」
「よしてくれ」
「中華もなしだ」と、上海帰りのユウジが云った。
「カレーも」と、マレーシアのマサユキも続けた。
「ワシントンに寿司を食べさせる店があるけど、ネタが違うんだ。どこまでもアメリカ風」と、トシが云った。
「マレーシアも似たようなもんだよ」と、マサユキが云った。
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 するとテーブルの前に、お相撲さんがやってきて、
「楽しんでますか?」と、笑顔で云った。
 いっぱいいかがですか? と僕たちがすすめると、これから一番取りますから、後でごっちゃんになります。とお相撲さんの田代が云った。
「タッシーと読んでください」
 トシと握手をして、タッシーは戻っていった。

「女の子たちは、どうしてるかな」と、ユウジが云った。
「おばさんになってるよ」と、トシが云った。
「俺たちだっておじさんだ」と、僕が云った。
 相撲が始まった。ぴしゃっとカラダがぶつかる大きな音がした。本格的なので驚く。だけど応援していたタッシーは、寄り切られて負けてしまった。
「タッシーずいぶん悔しそうだね」と、トシが不思議そうに云った。
「ショーなのになぁ」と、ユウジがビールをひとくち飲んで云った。
 案外、本気なんじゃないか。と、僕は思った。元関取らしいし。
 不思議な空気と、不思議な時間が流れていた。
 僕たちは中見は変わっていないし、声もあの頃と同じだけど、みんな歳を取ってる。肩書きも、学生ではなく部長だったり。ここは国技館に似せているだけど、居酒屋だ。お相撲さんも元関取だ。
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 トリックアートの中にいるような気がしていた。ぜんぶ、幻なのかもしれない。 酔っていた。
「次は、いつ会える?」とは、誰も訊かない。
 次は、何年後か分からないからだ。
「アメリカに、いつ戻る?」と、僕はトシに訊いた。
「来週の火曜日だよ」
 25年前と同じ声が、テーブルを飛び交っていた。
「いつみんなで飲める?」
 そう云いかけ、僕はビールのお代わりをした。
<取材 アライ@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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大江戸八百八町 花の舞
住所 東京都墨田区横綱1ー3ー20
電話 03ー5619ー4488
交通 JR総武線両国駅西口すぐ
   都営大江戸線両国駅よろ徒歩6分
営業 11時30分から14時 16時から24時
定休日 無休
ひとり3千円くらいでした。飲んだー。
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両国『ニュー鳥正』(東京)こんにちはギャングたち。

ニューがつく、昭和な店で。12032404_901585166600682_283463571_n

 『鳥正』の肉豆腐を食べに行こう。と、アライは思った。
 焼き鳥のタレで煮込んだ豆腐料理で、時々、無性に食べたくなる。丁度、両国界隈の用向きが終わり、そろそろ日暮れ時だった。
「ちょいと、兄さん、寄ってかない」と、キャバ嬢にはとうが立ったオンナに声をかけられた。白いハイヒールと体にぴったりとした花柄のボディコンを着ていた。
 それが、妙に似合うオンナだった。

「すまない。これから友だちと飲むんだよ」
「じゃ、そのお友だちとお寄りよ」
 オンナはそう云うと、店の地図が入った名刺をくれた。『青い城』という店らしい。
「後で寄るかも」と、アライは適当な返事をした。
「お待ちしてます。あたしはレイコだよ」と、オンナは軽くお辞儀をしながら行った。案外、礼儀正しい。青い城には行くことはなさそうだが、いい店なのかもしれないな。と、アライは思った。
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 生ビールを、と鳥正の女将に注文する。
「いつもの?」と、女将が云うと
「腹が減ってるんだ」と、アライが云った。
「じゃぁ、精のつくものね」
 女将がいなくなると、アライは手帳に挟んだ手紙の封を開けた。住所のないオクムラからの手紙だ。手紙と一緒に鍵がひとつ入っていた。
『すまない。新宿西口にあるコインロッカーの荷物を預かって欲しい。必ず、取りに行くから』
 手紙にはそう書かれていた。10万円の小切手と一緒に・・・
 ポルシェの鍵の次は、コインロッカーの鍵か、俺はホテルのフロントじゃないんだがな。と、アライは思った。
 肉豆腐と焼き鳥が来た。アライはビールを飲んで、肉豆腐に七味をたっぷりかけた。辛くて旨い。
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「オンナからの手紙じゃなさそうだな」
 白い帽子を被ったサングラスのオトコがアライの横に座った。もう一人は、腕に入れ墨をした青白い顔をした若い男だ。サングラスの横に黙って立っている。
「人違いだろう」と、アライが云った。
 サングラスがタバコをくわえると、入れ墨が両手でライターを持って火をつけた。その筋の人たちらしい。
 入れ墨がアライから手紙を奪って、サングラスに渡した。
「住所はなし。ほう、10万か、鍵は貰っとく」
 そう云うと、サングラスは小切手と鍵をジャケットのポケットに入れた。
「オクムラのことに首を突っ込むな」と、サングラスが云った。
 入れ墨が、ビールをひとつ注文した。サングラスのだろう。
「一杯飲んだら。一緒に来て貰おうか」と、サングラスが云った。
「ごめんだね」と、アライが云うと
「なんだと、この野郎!」と、入れ墨が凄んだ。
 入れ墨がジャケットのポケットから、ナイフをチラッと見せた。脅しだと思ったが、何かの弾みで刺されてもつまらない。喧嘩など、活きのいいやつがするもんだ。ビールが来た。サングラスがビールを一気に飲むと、
「どうするよ」と、云った。
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「分かった」と、仕方なくアライは云った。
 ビールを飲み干し、アライはレジで勘定を払った。と、同時に、スルリとふたりを避け、店から走り出た。入れ墨がアライのベルトを掴もうとした瞬間だ。拘束されたら、逃げられない。
 大通りから、暗い細い道を走り抜けた。心臓がバクバクとしていた。どこを走っているのか分からなかった。入れ墨が、追いかけてくる足音が聞こえる。どこまでも追いかけてくる気がした。次第に息が切れてくる。限界だった。
 どこでもいい。隠れないと・・・。

 店の扉を開けた。
「あら、来てくれたのね」
 薄暗い店の奥からオンナの声がした。
 花柄のボディコンを着たレイコだった。とすると、ここは青い城らしい。
「お友だちもご一緒?」
「お友だちは、帰ったよ。たぶん」
 息を整えながら云うとアライは、ポケットから鍵を出した。サングラスに渡したのは、原付のスペアキーだ。
 鍵を手のひらで転がしながら、
「ほら、面倒なことに巻き込まれてるじゃないか」と、アライは呟いた。
<取材 アラピー@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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ニュー鳥正
住所 東京都墨田区両国3ー24ー6
電話 03ー3631ー5984
交通 JR両国駅より徒歩2分
定休日 日曜日
二千円とちょいでした。
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撮影 田原慎一

両国『亀戸ぎょうざ 両国店』(東京)日本一ビンボーなタニマチ。

「俺、ここの醤油ラーメンが好きなんだ」11938054_892909227468276_1485776467_n

 アライがそう云うと、
「僕は、餃子が食べたいです」と、セッキーが云った。
 セッキーは、三段目の力士だった。鹿児島の中学を卒業して、部屋に入り5年くらい経つ。ブルーのジャージにスニーカーをはいて髷を結っている。身長は185センチ以上はある。カウンターの椅子から、はみ出しそうだ。

 セッキーとは、3年くらいのつきあいだ。
 アライがT大病院の整形外科に入院していた時、隣のベッドがセッキーだった。年は離れていたけど、セッキーとは馬が合った。
 セッキーが病院でちゃんこ鍋を作ったり、患者たちと主治医でカラオケに行ったり、楽しいというと変だけど、セッキーがいて退屈しない入院生活だったと思う。
 T大病院は、重い病気の患者が多い(僕も死ぬと思っていた)。そのためか、妙にみんなが明るく振る舞っているように見えた。患者も医者も。

 うつぶせになり、首を斜めに固定されて動けない男の子がいて、
「苦しそうだね」と、アライが主治医のアッキーに訊くと、
「あの子は、あの姿勢が一番楽なんです」と、アッキーが教えてくれた。
 セッキーが作ったちゃんこ鍋を、彼は大喜びで食べたそうだ。お相撲さんが作ってくれたって・・・。
 あの子は、無事退院できたのだろか。
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 餃子が6人前来た。
 パリッとした皮の薄い餃子である。
「ウマイっすねぇ」と、セッキーはたちまち餃子二人前平らげ、ビールをお代わりした。
「どんどん食ってくれ」と、アライは云った。
 俺は日本一貧乏なタニマチだな、とセッキーの食いっぷりを見てアライは思った。
「相談ってなに?」と、アライが訊いた。
「好きな娘ができたんす。で、指輪を買いに行きたいんすけど分からなくて」
「俺だって分かんねぇ」
「お相撲さんがひとりで買いに行くと、目立って恥ずかしいし」
「分かったよ。どこで買う?」
「デパートじゃないっすか?」
 そう云うと、セッキーはレバニラ炒めと餃子を6人前お代わりした。
 ラーメンが来た。アライの好物の亀戸の醤油ラーメンだ。
「もう、〆のラーメンっすか?」
「違うよ。俺は、ラーメンをつまみに飲むんだ」
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 T大病院にいた時、朝、食事をした後「茶店に行こう」となり、茶店でセッキーは、カツ丼定食とラーメン定食を食べる。で、食べ終わったら、そろそろ昼飯だな。と、病室に戻って昼飯を食べる。食べ終わると、茶店に戻る。
「そんなに食べて大丈夫なの」と、セッキーに訊いたことがあった。
「これくらい食べないと、体を維持できないんすよ」
 お相撲さんは大変なんだなと、アライは思った。
「どうやって知り合ったの」
「友だちの姉さんと一緒に撮った写真に、むっちゃ可愛い女の子がいたんす。で、姉ちゃんにその娘の携帯番号訊いて、毎日、頑張って口説きました」
 セッキーは生ビールを飲み干して、お代わりをした。
「そんなんでつき合えるんだ」
「まぁ、そーなんすけど。『ものすごく美人だね』と俺が云うと『そんなこと云われたこと一度もない』とか云うんです。寿司屋の娘っす」
 会うことになって、その娘が来たら、別人だったと云う。
 セッキーが可愛いと思った娘の隣に写っていた女の子だった。なるほど、とアライは思った。
「おまえ偉いよ」
 身辺が華やかなセッキーが羨ましい、とアライは思った。
「俺って、かっこ悪いか」と、ふと、アライは訊いてみた。
「チカラが抜けてて、大人って感じっす」
 うらぶれてるってことか。
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「週末、デパートで指輪を買おう」と、アライが云った。
 セッキーは嬉しそうに生ビールをお代わりした。もはや何杯目か分からなかった。
 そうだ、俺もオンナを口説いてみよう。
 アライは、ご機嫌にビールを飲むセッキーを見て思った。きっかけは何でもいい。ことによると、いいこと始まるかも知れないじゃないか。
<取材 アラピー@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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亀戸ぎょうざ両国店
住所 東京都墨田区両国4ー34ー10
電話 03ー3631ー3740
交通 JR両国駅東口よと徒歩4分
   都営大江戸線両国駅A4出口よろ徒歩2分
営業 11時30分から20時40分
定休日 無休
お相撲さんと飲まなければ安いです。1000円くらいで飲めます。
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