雨宿り。
雷が鳴った。
夜空が光る。
大粒の雨がボタっと左腕に当たるのを合図に、ボタボタと雨が降ってきた。
思わず鞄を頭に乗せる。
僕とみーやんとサナエは足早に、雨宿りができそうな店を探した。せんべろ屋ならなお、いいけど・・・。
「その先に、店がありそう」と、サナエが云った。
ぼんやりと居酒屋らしき看板が光っていた。
『鶏魚キッチン』とある。
店頭に、
”この子います。ノコギリザメ”という、張り紙がしてあった。
光る空と、雨にせかされ、
是非もなく、僕たちは店に吸い込まれる。
案内されたのは、2階の窓際である。
眼下ではクルマが行き来していた。天満橋の交差点だろうか? 雨が、激しく窓を叩いている。外は嵐だ。
「サメある?」と僕は若い男の店員に尋ねた。
「ノコギリザメですね」
「珍しいね」とみーやんが云った。
「さっぱりして美味しい刺し身です」と、店員が云った。
じゃぁ、それを。と、麦ロック2杯と、ビールを頼む。ビールはみーやんである。
「生國神社の薪能は、迫力あったね」
そう云うと、サナエはパソコンを鞄から出し、テーブルの上でパタッと開いた。
来月27日に開く『千人の月見の宴』の案内文を作らなければならないからだ。なにしろ、来月に迫っている。せんべろ中でも作業作業である。
ビールと麦ロックが来た。
サナエは、早速、麦ロック片手にパソコンをパタパタと叩く。
キーボードを叩きながら、
「お能の席って、こんな風になってたんやなぁ」と、サナエが云った。
僕も、薪能をやることになって初めて知った。
正面がいい席なのだけど、
僕たちの薪能では、正面左にある脇正面が、いい。薪能を観てると、月が正面から上がる席である。月見の宴だからね。
子どもの頃、月見の日にお団子をお供えしていたのを覚えている。
「お団子食べていい?」と、母に妹が云った。
「うさぎさんが先だから、明日、みんなで食べましょう」と、母が云う。
次の日、団子がなくなっていた。
「お団子がない」と、残念そうに妹が云った。
「うさぎさんが、食べてしまったんだねぇ」と、母が行った。
もちろん、父と母が夜に食べたのである。
妹は、とても不満そうだけど、それはそれで納得したようだった。うさぎさんが食べたのなら仕方が無いのだ。
子どもは、8歳くらいまで、虚構と現実が混じった世界で生きていると、何かの本で読んだことがある。8歳までは、サンタクロースもいるし、お化けも、月のウサギもいる。ドラゴンボールの亀仙人だって、殺せんせーだっている。彼らにとっては、みな現実なのだ。
ところが、8歳を越えると、そんなものは作り話だと気づき始める。
大人になるのって、ちょっと寂しい。と、僕は思っている。サンタはいるかもしれないのにね。
「ノコギリザメを触ってみてください」と、店員が云った。
刺し身の皿に、サメの皮をつけてくれていた。食べるのではなくて、触って貰うためらしい。
ざらざらしていた。ワサビが摺れそう。
「鮫肌です」と、店員が云った。
「これって、食べられます?」と、サナエが訊いた。
「揚げたら、食べられるかもしれません。やってみますか?」
「いえ、大丈夫です」と、みーやんが云った。
揚げて貰うべきだったか、と断って少し後悔したけど。旨そうではないし、食べられるのだったら、最初から調理されていると思う。
ノコギリザメの刺し身は、鯛のようなさっぱりした味がした。
麦ロックを飲んで、さらに食べてみる。旨い。
つい、シュウマイも追加した。
終電が近づいていた。サナエは、終バスで帰るらしい。
「せんべろ屋も出さないとね」と、ビールを飲んでサナエは云うと、
パソコンを閉じた。一区切りついたらしい。
月見の宴まで、後、一ヶ月しかなかった。焦っても仕方ないけど。
店をでると、雲の切れ間から星が見えていた。
夜の雲が、ゆっくり移動している。
雷様は、もう、どこかへ行ったようだ。鶏魚キッチンには、また、ゆっくりと来よう。幻のような雨宿りの夜だった。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
鶏魚Kitchenのぶ 天満橋店
住所 大阪府大阪市中央区大手前1ー6ー3
電話 050ー5789ー1761
交通 京阪本線天満橋駅より徒歩1分
地下鉄谷町線天満橋駅より徒歩1分
営業 11時30分から14時 17時30分から24時15分(月から金)
1730分から23時30分(土・祝日)
定休日 日曜日
ひとり二千円いかないくらいでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
日本全国で巡礼する隊員たち。
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
隊員 サナエ@婚活中 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab
かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一
雷が鳴った。
夜空が光る。
大粒の雨がボタっと左腕に当たるのを合図に、ボタボタと雨が降ってきた。
思わず鞄を頭に乗せる。
僕とみーやんとサナエは足早に、雨宿りができそうな店を探した。せんべろ屋ならなお、いいけど・・・。
「その先に、店がありそう」と、サナエが云った。
ぼんやりと居酒屋らしき看板が光っていた。
『鶏魚キッチン』とある。
店頭に、
”この子います。ノコギリザメ”という、張り紙がしてあった。
光る空と、雨にせかされ、
是非もなく、僕たちは店に吸い込まれる。
案内されたのは、2階の窓際である。
眼下ではクルマが行き来していた。天満橋の交差点だろうか? 雨が、激しく窓を叩いている。外は嵐だ。
「サメある?」と僕は若い男の店員に尋ねた。
「ノコギリザメですね」
「珍しいね」とみーやんが云った。
「さっぱりして美味しい刺し身です」と、店員が云った。
じゃぁ、それを。と、麦ロック2杯と、ビールを頼む。ビールはみーやんである。
「生國神社の薪能は、迫力あったね」
そう云うと、サナエはパソコンを鞄から出し、テーブルの上でパタッと開いた。
来月27日に開く『千人の月見の宴』の案内文を作らなければならないからだ。なにしろ、来月に迫っている。せんべろ中でも作業作業である。
ビールと麦ロックが来た。
サナエは、早速、麦ロック片手にパソコンをパタパタと叩く。
キーボードを叩きながら、
「お能の席って、こんな風になってたんやなぁ」と、サナエが云った。
僕も、薪能をやることになって初めて知った。
正面がいい席なのだけど、
僕たちの薪能では、正面左にある脇正面が、いい。薪能を観てると、月が正面から上がる席である。月見の宴だからね。
子どもの頃、月見の日にお団子をお供えしていたのを覚えている。
「お団子食べていい?」と、母に妹が云った。
「うさぎさんが先だから、明日、みんなで食べましょう」と、母が云う。
次の日、団子がなくなっていた。
「お団子がない」と、残念そうに妹が云った。
「うさぎさんが、食べてしまったんだねぇ」と、母が行った。
もちろん、父と母が夜に食べたのである。
妹は、とても不満そうだけど、それはそれで納得したようだった。うさぎさんが食べたのなら仕方が無いのだ。
子どもは、8歳くらいまで、虚構と現実が混じった世界で生きていると、何かの本で読んだことがある。8歳までは、サンタクロースもいるし、お化けも、月のウサギもいる。ドラゴンボールの亀仙人だって、殺せんせーだっている。彼らにとっては、みな現実なのだ。
ところが、8歳を越えると、そんなものは作り話だと気づき始める。
大人になるのって、ちょっと寂しい。と、僕は思っている。サンタはいるかもしれないのにね。
「ノコギリザメを触ってみてください」と、店員が云った。
刺し身の皿に、サメの皮をつけてくれていた。食べるのではなくて、触って貰うためらしい。
ざらざらしていた。ワサビが摺れそう。
「鮫肌です」と、店員が云った。
「これって、食べられます?」と、サナエが訊いた。
「揚げたら、食べられるかもしれません。やってみますか?」
「いえ、大丈夫です」と、みーやんが云った。
揚げて貰うべきだったか、と断って少し後悔したけど。旨そうではないし、食べられるのだったら、最初から調理されていると思う。
ノコギリザメの刺し身は、鯛のようなさっぱりした味がした。
麦ロックを飲んで、さらに食べてみる。旨い。
つい、シュウマイも追加した。
終電が近づいていた。サナエは、終バスで帰るらしい。
「せんべろ屋も出さないとね」と、ビールを飲んでサナエは云うと、
パソコンを閉じた。一区切りついたらしい。
月見の宴まで、後、一ヶ月しかなかった。焦っても仕方ないけど。
店をでると、雲の切れ間から星が見えていた。
夜の雲が、ゆっくり移動している。
雷様は、もう、どこかへ行ったようだ。鶏魚キッチンには、また、ゆっくりと来よう。幻のような雨宿りの夜だった。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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鶏魚Kitchenのぶ 天満橋店
住所 大阪府大阪市中央区大手前1ー6ー3
電話 050ー5789ー1761
交通 京阪本線天満橋駅より徒歩1分
地下鉄谷町線天満橋駅より徒歩1分
営業 11時30分から14時 17時30分から24時15分(月から金)
1730分から23時30分(土・祝日)
定休日 日曜日
ひとり二千円いかないくらいでした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
日本全国で巡礼する隊員たち。
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
隊員 サナエ@婚活中 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab
かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一