北の国から。
「埼玉でごめん」
「なんも。東京も埼玉も内地だから」
「内地って・・・」
根室から、従姉妹のはるぴょんが来ていた。東京のもんじゃ焼きが食べたいと云うからじゃぁ『金太郎』だな、と連れてきたのだ。
だって美味しいんだもん。近いしね。
「かおりんに、前に会ったのはいつだっけ?」
はるぴょんのアニメ声を久しぶりに聴くと懐かしい。長い髪をショートカットにしていたけど、変わってないなぁ、と声を聞きながら思った。
子どもの頃と、同じ声なんだよ。
「忘れちゃった。一昨年、おじさんの法事だっけ。お寺がむちゃくちゃ寒かった二月の」
「そんなに経ってたっけ」
ここ? と、もんじゃと書いてある暖簾を見てはるぴょんが云った。
「初めて食べるから、わくわくするよ」
「いらっしゃい」
店員の大久保さんが元気よく云った。赤いTシャツを着てタオルで鉢巻きをしている。俳優にこんな人いたな、と会う度に思っているけど、思い出せないでいる。誰だっけ?
「従姉妹のはるちゃん」
「美人が来ると、店が華やぐなぁ」
同じTシャツを着たおじさんが云った。眼鏡をかけた人なつこそうな人だ。笑顔がいい。
「うちの専務なんです」と、大久保さんが云った。
「東京の人は、口がうまいから」と訛ながら、はるぴょんがぺこりとお辞儀をした。
「ここ埼玉だから」
「おんなじ内地っしょ」
子どもの頃、根室に遊びに行ったわたしのことを内地の友だちって紹介してたのを思い出していた。内地かい。と、みんな驚いたように反応するのが不思議だった。
「彼女、根室から遊びに来てるんです」
「もんじゃ焼きは根室にはないの?」と、大久保さんが訊いた。
「なんにもないです」と、はるぴょんが云った。
なんにもないことないだろう。
いつものやつ焼いてください。と、注文した。それと、ビールもふたつ。
「カマンベールまるごと焼くもんじゃが美味しいの」
「ケンタッキーがないのよ」
なんのこと? と、はるぴょんの顔を見た。
「根室にないの。中標津とか、釧路に行く人がいたら、お土産に頼んだりするんだよ」
そうなのか。ケンタを特別なお土産にと思ったことなかった。
まぁ、まずはビールで乾杯だ。
カマンベールもんじゃがやってきた。
ごろんとカマンベールがのっかっている。すごいのだ。
「これこれ」と、わたしは頬を緩ませながら云った。
早速、大久保さんがじゃじゃっと混ぜて、熱い鉄板に乗せてくれる。もんじゃの焼ける香りが漂う。なんだか嬉しい。
「焦げたとこが美味しいの」と、わたしが云った。
「街中が暖かいねぇ。根室じゃ、8月にストーブ焚くときがあるんだよ」
「プーチンは元気?」と、訊いた。
はるぴょんが飼っている白い犬だ。ムツゴロウの動物大国から、貰ってきた由緒正しい雑種らしい。
「カラスからかわれて可愛そうなの」
どういうこと?
カオリは首を傾げて、はるぴょんを見た。ビールをひとくち飲む。喉が渇いているから旨い。泡まで美味しい。
カマンベールが溶けて、いい具合。食べられそうかな?
心の声が聞こえたのか、
「もう、食べられるよ」と、大久保さんが云った。
楽しみ、とはるぴょんが小さなヘラでもんじゃをすくう。美味しい! と、アニメ声が響いた。で
しょう? と、わたしも焦げたところをすくって一口食べた。おお、美味。
「カラスが二匹やってきて、片方がプーチンの注意を引くの。それで、片方がえさ入れを咥えて逃げるんだよ。最後に、えさ入れがプーチンの小屋の上に置いたりもするんだよ。やつらは、毎日プーチンをからかいに来るの」
犬がカラスにからかわれてるんだ・・・。
「でも、仲のいい友だちもいるんだよ」
「友だち?」
「マリーってお隣さんの柴犬。プーチンと散歩に行くと、マリーもついてくるんだ」
「マリーの飼い主と一緒に?」
「マリーは、勝手に来るから飼い主はいないわ」
「放し飼いなの?」
「そういうわけじゃないけど、毎日、家を抜け出してくるみたい」
「変なの」
何年か前、はるぴょんの家に遊びに云ったことがあった。
真冬の根室で流氷を見に行った時のことだ。プーチンは氷のように堅い雪の上で寝ていたのを覚えている。プーチンが寝る場所だけ、氷が溶けて地面がうっすらと見えていた。
浦和の室内犬だったら、たちまち死んでしまいそうだ。服を着て散歩している犬を見かけると、いつも氷の上で寝ているプーチンを思い出す。
「これからどこに行く予定?」
「ディズニーランドと、そうねぇ大阪にも寄りたいな」
「大阪遠いよ」
「そうかな。たこ焼き食べたいし」
普通、東京のついでに大阪に寄ったりはしない。はるぴょんの距離感は、わたしとは違うらしい。
「来年は、根室に来なよ」
「じゃぁ、ケンタッキー持って」
「ミスタードーナツもね」
わたしたちは、笑いながらビールのお代わりをした。
<取材 かおりん@もつ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
金太郎
住所 埼玉県さいたま市浦和区仲町2ー3ー4
電話 048ー822ー8833
交通 浦和駅西口より徒歩6分
営業 11時30分から14時 17時から23時30分(月から金)
11時30から23時30分(土・日・祝)
定休日 無休
ひとり2千円くらい。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
隊員 サナエ@女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
隊員 ひろみ@デザイナー ナホ@バイオリニスト
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一
「埼玉でごめん」
「なんも。東京も埼玉も内地だから」
「内地って・・・」
根室から、従姉妹のはるぴょんが来ていた。東京のもんじゃ焼きが食べたいと云うからじゃぁ『金太郎』だな、と連れてきたのだ。
だって美味しいんだもん。近いしね。
「かおりんに、前に会ったのはいつだっけ?」
はるぴょんのアニメ声を久しぶりに聴くと懐かしい。長い髪をショートカットにしていたけど、変わってないなぁ、と声を聞きながら思った。
子どもの頃と、同じ声なんだよ。
「忘れちゃった。一昨年、おじさんの法事だっけ。お寺がむちゃくちゃ寒かった二月の」
「そんなに経ってたっけ」
ここ? と、もんじゃと書いてある暖簾を見てはるぴょんが云った。
「初めて食べるから、わくわくするよ」
「いらっしゃい」
店員の大久保さんが元気よく云った。赤いTシャツを着てタオルで鉢巻きをしている。俳優にこんな人いたな、と会う度に思っているけど、思い出せないでいる。誰だっけ?
「従姉妹のはるちゃん」
「美人が来ると、店が華やぐなぁ」
同じTシャツを着たおじさんが云った。眼鏡をかけた人なつこそうな人だ。笑顔がいい。
「うちの専務なんです」と、大久保さんが云った。
「東京の人は、口がうまいから」と訛ながら、はるぴょんがぺこりとお辞儀をした。
「ここ埼玉だから」
「おんなじ内地っしょ」
子どもの頃、根室に遊びに行ったわたしのことを内地の友だちって紹介してたのを思い出していた。内地かい。と、みんな驚いたように反応するのが不思議だった。
「彼女、根室から遊びに来てるんです」
「もんじゃ焼きは根室にはないの?」と、大久保さんが訊いた。
「なんにもないです」と、はるぴょんが云った。
なんにもないことないだろう。
いつものやつ焼いてください。と、注文した。それと、ビールもふたつ。
「カマンベールまるごと焼くもんじゃが美味しいの」
「ケンタッキーがないのよ」
なんのこと? と、はるぴょんの顔を見た。
「根室にないの。中標津とか、釧路に行く人がいたら、お土産に頼んだりするんだよ」
そうなのか。ケンタを特別なお土産にと思ったことなかった。
まぁ、まずはビールで乾杯だ。
カマンベールもんじゃがやってきた。
ごろんとカマンベールがのっかっている。すごいのだ。
「これこれ」と、わたしは頬を緩ませながら云った。
早速、大久保さんがじゃじゃっと混ぜて、熱い鉄板に乗せてくれる。もんじゃの焼ける香りが漂う。なんだか嬉しい。
「焦げたとこが美味しいの」と、わたしが云った。
「街中が暖かいねぇ。根室じゃ、8月にストーブ焚くときがあるんだよ」
「プーチンは元気?」と、訊いた。
はるぴょんが飼っている白い犬だ。ムツゴロウの動物大国から、貰ってきた由緒正しい雑種らしい。
「カラスからかわれて可愛そうなの」
どういうこと?
カオリは首を傾げて、はるぴょんを見た。ビールをひとくち飲む。喉が渇いているから旨い。泡まで美味しい。
カマンベールが溶けて、いい具合。食べられそうかな?
心の声が聞こえたのか、
「もう、食べられるよ」と、大久保さんが云った。
楽しみ、とはるぴょんが小さなヘラでもんじゃをすくう。美味しい! と、アニメ声が響いた。で
しょう? と、わたしも焦げたところをすくって一口食べた。おお、美味。
「カラスが二匹やってきて、片方がプーチンの注意を引くの。それで、片方がえさ入れを咥えて逃げるんだよ。最後に、えさ入れがプーチンの小屋の上に置いたりもするんだよ。やつらは、毎日プーチンをからかいに来るの」
犬がカラスにからかわれてるんだ・・・。
「でも、仲のいい友だちもいるんだよ」
「友だち?」
「マリーってお隣さんの柴犬。プーチンと散歩に行くと、マリーもついてくるんだ」
「マリーの飼い主と一緒に?」
「マリーは、勝手に来るから飼い主はいないわ」
「放し飼いなの?」
「そういうわけじゃないけど、毎日、家を抜け出してくるみたい」
「変なの」
何年か前、はるぴょんの家に遊びに云ったことがあった。
真冬の根室で流氷を見に行った時のことだ。プーチンは氷のように堅い雪の上で寝ていたのを覚えている。プーチンが寝る場所だけ、氷が溶けて地面がうっすらと見えていた。
浦和の室内犬だったら、たちまち死んでしまいそうだ。服を着て散歩している犬を見かけると、いつも氷の上で寝ているプーチンを思い出す。
「これからどこに行く予定?」
「ディズニーランドと、そうねぇ大阪にも寄りたいな」
「大阪遠いよ」
「そうかな。たこ焼き食べたいし」
普通、東京のついでに大阪に寄ったりはしない。はるぴょんの距離感は、わたしとは違うらしい。
「来年は、根室に来なよ」
「じゃぁ、ケンタッキー持って」
「ミスタードーナツもね」
わたしたちは、笑いながらビールのお代わりをした。
<取材 かおりん@もつ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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金太郎
住所 埼玉県さいたま市浦和区仲町2ー3ー4
電話 048ー822ー8833
交通 浦和駅西口より徒歩6分
営業 11時30分から14時 17時から23時30分(月から金)
11時30から23時30分(土・日・祝)
定休日 無休
ひとり2千円くらい。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
隊員 サナエ@女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
隊員 ひろみ@デザイナー ナホ@バイオリニスト
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一