行け! せんべろ探検隊。

千円でべろべろに酔える店を彷徨う、せんべろ探検隊ストーリーです。探検隊だから、時には、危険なまんべろも。いざ、せんべろ劇場へ! まぐまぐで、メールマガジンを発行してます。ほぼ週末に人気記事を発送してます。

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祇園四条

祇園四条『水炊き 萬治郎』(京都)危険なまんべろ探検。

せんべろ探検隊のまんべろ忘年会。12342407_759008280871207_4797159054213709058_n

 能楽師・辰巳満次郎氏をお誘いし、忘年会をしてきた。
 秋の中秋の名月『千人の月見の宴』で、舞っていただいたご縁である。
 当初僕は、四条大橋袂にある『東華菜館』などはいかがかと伝え、満次郎さんに「どこかよいところはございますか?」と、尋ねてみた。
「辰巳稲荷の横に、萬治郎という水炊き屋がございます。そこは、なかなか予約がとれない店ですが」と、教えていただいた。
 それはさぞや、と思い。僕は、萬治郎に予約電話をしてみることにした。

「予約を入れたいのですが」
「いつでございますか?」と、女性が云った。
「12月の15日、19時からですが」
「生憎と、その時期は混んでいまして、お店には以前来られたことがございますでしょうか」
「能楽師の辰巳満次郎さんから、ご紹介いただいたのですが」
「女将に代わらせていただきます」
 しばらくして、女将が電話口に出た。
「席をお取りさせていただきます」
 京都らしいのである。
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 そうこうしているうちに、当日を迎えた。
 陽は落ち、あたりはすっかり暗い。ポツリと小雨が降り、道路は濡れ光っていた。僕たちせんべろ探検隊は鴨川沿いから、白川の上流へ歩いていた。みーやんとサナエである。
 ほどなく『辰巳稲荷』が姿を現す。
 若い外国人の男性が三脚を据えて、辰巳稲荷を何枚も写真を撮っていた。僕は、遠慮がちに辰巳稲荷の前に進み、手をあわした。なんでも芸事の神様だそうだ。
 頼み事がいっぱいありそう。

「よう、おこしやした」
 萬治郎に着くと、女将が迎えてくれた。築150年の古い屋敷だ。凜とした空気が漂っている。
 ジリリリンと、黒電話が鳴った。
 店員が電話に出る。現役の黒電話を数十年ぶりに見たように思う。
 磨き上げられた木の廊下を通り、六畳の部屋に案内された。
 ガラスの入った襖から、鯉が泳ぐ池が見える。池の向こうの部屋では、賑やかに宴が開かれていた。

 ほどなく、満次郎さんが到着した。
 部屋に入るなり、
「玄関で、辰巳満次郎です。と名乗っても、誰も驚かないんだよ」と、満次郎さんが云った。
「僕が満次郎さんが到着しますと、伝えましたから」
「そうですか」と、満次郎さんが残念がる。人を楽しませるのが、好きなのだろう。
 僕たちは、ビールで乾杯をした。
「肝の甘辛煮です」と、京言葉で仲居さんがテーブルに小皿を並べながら云う。
 僕は、レバーが苦手なのだが、ここのは旨かった。新鮮で上質の肝なのだ。
 女将が鶏スープを、鍋からすくって分けてくれる。
 僕は、冷酒を注文した。この鍋には日本酒がいい。
「昔、父親に連れられて、よくこの店に来ていました」と、満次郎さんが云った。
「おおきに」と、女将が微笑む。
 どうぞ、と僕もスープを女将からいただく。すこぶる旨い。
「辰巳稲荷の隣で、萬治郎ですから、深いご縁があると思いました」と、女将が云った。
 名前で予約を受けたんだ、と僕はそこで気づいた。
「常連かと思ってました」と、サナエが不思議そうな顔をして云った。
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 水炊きが煮え、宴が始まると能の興味深き話しが続いた。
「靴下は、どちらの足から履きますか」と、満次郎さんが訊いた。
 僕は、右からだと答えた。みーやんも右から、サナエは左。サナエは左利きなのだ。
「能では、左から履きます。歩き出すときも、左。昔の作法が、能に伝わっているのです」
「春日大社の宮司さんに似た話を伺ったことがあります。真っ暗な部屋で、一人だけに伝える儀式があって、それはどんなアレンジも許されない。作法を変えてしまうと、もとのものが分からなくなりますから、と仰っていました」と、僕が云った。
 能にも同じなのかもしれない。
 興が乗り、僕たちは閉店近くまで過ごさせていただいた。
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 店を出ると、雨は上がり、雲の間から星が見えていた。
「もう、一軒行きませんか」と、満次郎さんが云った。
 京の夜は、これからである。
<記事 大阪せんべろ探検隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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水炊き 萬治郎
住所 京都府京都市東山区新橋通大和大路東入元吉町58
電話 075ー561ー1654
交通 祇園四条駅から徒歩5分
営業 17時から19時30分
定休日 5月から9月 2月3日・月曜
コースが6千円。まんべろです。けど、大満足のお店でした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
         沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG もーちゃん@トラベラー
         オーシタ@スリランカ アサミ@セレブ
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー ナホ@バイオリニスト
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス

※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一
 

祇園四条『元祖 大四畳半酒場ポン』(京都)おもちゃ箱のような四畳半。

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 アライは仕事を終えると、ヤマモトと四条袂にある『東華菜館』の前で待ち合わせをした。日も暮れようとする6時頃だ。
 少しばかり早く着いたアライは、四条大橋の上から鴨川を眺めた。川岸には、等間隔でカップルが並んでいる。アオサギが、川の浅瀬に2匹立っていた。
 しばらくすると、カメラを首から下げたヤマモトがやってきた。赤いディバックに、ジーンズ、ブルーのシャツにスニーカーだ。どっちが観光客なのか分からない格好である。
 
ヤマモトは、三代続く江戸っ子だった。ところがカメラを持ってしょっちゅう京都で舞妓さんを撮りに行くほどの、舞妓オタクだ。京都に転勤が決まると、大喜びで京都に住み、もう3年になる。

「お待たせさんどす」と、ヤマモトが云った。
「すっかり京都人だな」
「ありがとさんどす。あ、ちょい待って」
 ヤマモトはそう云うと、コマコはーん! と、手を振って首から提げていたカメラで舞妓さんを連写した。プロが使うような望遠レンズをつけたカメラだ。
 四条通を挟んだ歩道を歩いている舞妓さんが、こっちを見て会釈をした。
「コマコはん、ええわぁ。ええわぁ」と、独り言を呟きながらヤマモトは後ろ姿まで連写していた。もはや、盗撮である。
「知り合いなの?」と、アライが訊いた。
「コマコはんは、祇園で有名な舞妓はんなんどす。ちょっとの、知り合いどすな」
 
大学生が落研に入って「するってぇと」と、妙な話し方になってしまった友だちを思い出していた。ヤマモトもその類だな、とアライは思った。
そのうち、元の話し方に戻るだろう・・・。
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「これから、舞妓さんが居る店に案内してくれるの?」
 舞妓さんのいる店で一杯飲みたい。アライはそう思っていた。
「一見さんが何云うてはるんどすか。今から行くのんは、アライはんが好きなせんべろ屋どすえ」
 ヤマモトが案内してくれたのは、木屋町にある居酒屋だった。
 看板に『大四畳半酒場 ポン』と書いてある。
 入り口が、茶室のように狭い造りだった。しゃがんで、入る感じだ。
「いらっしゃい」と、人なつこそうな店主が云った。
「東京から来た、私の古い友人どす」と、ヤマモトが云った。
 馴染みの店らしい。
 店の中は、おもちゃ箱のようだ。壁にはギターが掛けてあり、古いポスターや何やら分からない看板や旗なんかが、ごちゃっと飾ってある。でも、どこか落ち着くな。と、アライは思った。
 とりあえず、ビールで乾杯!!
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「ライブやったり、賑やかなお店なんどす」と、ヤマモトが云った。
「舞妓さんは、どこにいるの?」
「河原町を歩いてたら、置屋はんから移動してはる舞妓はんには会えますえ」と、カメラのレンズに手を掛けながらヤマモトが云った。
「東京には戻れないの?」
「何云わはるかと思えば、京都がええに決まってますやろ」
「健二のエサって?」
「ここの名物どす。卵かけごはんやねぇ」と、ヤマモトが云った。
 名物のエサを頼んでみた。
 
「仕事は忙しいのか」
「ぼちぼち、どすなぁ。明日、舞妓はんの撮影会があるんどすけど、一緒に行きまへんか?」と、ヤマモトが云った。
 アライは時間が無いからと適当に断る。ヤマモトが残念そうな顔をした。祇園で一番の舞妓さんを見せたかったらしい。
 健二のエサが意外と旨い。ビールが進む卵かけご飯だ。

「年末に帰りますよって、八木はんたちによろしゅう」
 そう云うと、ヤマモトはカメラの液晶をアライに向けて、今日獲った舞妓さんの写真の説明をした。コマコはん、コアキはん、これはカツエ姉さん・・・。
 ヤマモトは相変わらずだったけど、情熱を傾けるモノがあるのが羨ましい。
 そえRから小一時間ばかり飲んで、次の店にハシゴである。京都探検は、始まったばかり。楽しくなってきた。
<取材 アラピー@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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元祖 大四畳半ポン
住所 京都府京都市中京区木屋町通三条下ル材木町都会館1F
電話 090ー9112ー4197
交通 京阪三条駅 阪急四条駅
営業 20時から翌6時
定休日 無休
サクッとせんべろでした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
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大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@元女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
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      隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
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撮影 田原慎一

祇園四条『すいしん』(京都)京都の月。もうすぐ、満月だ。

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 雨が降っていた。
 僕は、みーやんと『すいしん』で待ち合わせていた。『千人の月見の宴』の打ち合わせである。みーやんから少し遅れる。と、メールが入り、僕はひとり飲んでいた。
 客は、僕のほか誰もいない。静かな夜だった。

 そう云えば、幕末の『池田屋』で、会合に遅れた長州の桂小五郎が命拾いをしたんだな。と、ふと思った。みーやんみたいに・・・
 『池田屋』は、ここから歩いてすぐのところだ。
 しばらく飲んでいると、新撰組のダンダラ模様を着た男たちが入って来た。京都によくいるコスプレイヤーだろう。大学生くらいだろうか?
「酒!」と、がっしりとした背の低い男が叫んだ。
 雰囲気もでている。薄汚れたダンダラ模様の着物に、二本差し。お揃いのように、隊士たちは草履を履いていた。
 僕は、みーやんにメールを送ろうとしたけど、圏外になっていた。あんなに降っていた雨もやみ、秋だというのに夏に戻ったような蒸し暑さだ。

「祇園の井筒屋に集まるらしい」
「祇園かいな、生意気なやつらや。俺らを『みぼろ』て、いうてるらしいで。ぼろぼろ貧乏や」
「寄り合いは、今夜なんは、確かなんか」
「そうやけん」
「かたっぱしから、探索するしかねぇな」
 新撰組の男たちの会話が後ろから聞こえていた。どうやら、これから『池田屋』を襲撃するようだった。
「平助は、どこなんだ」
「近藤さんと一緒だよ」
「腹ごしらえが先や」
 密かに探索しているには声の大きすぎだろう。でも、これくらい大声じゃないと、パフォーマンスにはならないだろう。浪士たちのコスプレもいるのだろうか?
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「池田屋や」と、突然、入り口からパフォーマンスの仲間が駆け込んできた。
 大汗をかいて、はぁはぁと息が荒かった。
「吉田と宮部は?」
「知らんて! 早うこんかい」と、男が云うと新撰組の一団は、店から慌ただしく出て行った。勘定も払わずに・・・。
 ことによると、店のパフォーマンスなのかもしれない。
 
 また、雨が降り出した。
 携帯にみーやんからのメールが着信した。と、同時にみーやんが店に入ってきた。
「いましがた、コスプレがおらへんかった?」と、僕はみーやんの顔を見るなり尋ねた。
「芸子はんなら、いましたけどね」
 番傘をさした、いい女だったらしい。思わずついて行こうかと思ったくらい。
「また、雨が降ってきたなぁ」
 開け放った扉から、雨の匂いが侵入してくる。さっきとは違う涼しい秋の風だ。
「ずっと、降ってましたよ。俺は、日曜日の『千人の月見の宴』が心配や」
 そう云うと、みーやんは生ビールを頼んだ。
「天気どう?」と、僕が訊くと、
「晴れるみたいです」と、みーやんが答えた。
「新撰組がいたんだ」
 僕は、みーやんにさっきいた男たちのことを話した。
 みーやんはビールを半分ほど飲み干し、しばらく黙っていた。
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「それ、幽霊ちゃいますか?」
 僕は、コスプレーヤーたちと思いたい。幻のような新撰組だったけど。
「京都はオバケだらけやから、それ幽霊ですわ。雨の夜の怪談話は、祇園ではよう聞きます」
 みーやんがだし巻きタマゴを注文した。それと、イカの焚いたん。
「ええ、経験ですやん。新撰組やし」
 みーやんは、そう云いビールも続けてお代わりした。
 幽霊が出たと云っても、さほど驚かないみーやんに驚く。
「産経新聞と朝日新聞と読売新聞が、『千人の月見の宴』を取材してくれました」
と、みーやんが嬉しそうに云った。
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 何人来るのだろうか?
 不安だった。多くても、少なくても・・・。
「薪能の演目『融(とおる)』も、光源氏の幽霊が出てくる話だ」と、僕が云った。
「河川敷で『融』やったら、光源氏の幽霊も来るんちゃいますか? きっと、新撰組の幽霊も応援してくれますよ」と、みーやんが云った。
 そうは思えないけど・・・。
 日曜日は晴れそうである。ああ、晴れたらいいなぁ。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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酒房 すいしん
住所 京都府京都市中京区河原町通四条上ル一筋目東入ル米屋町384
電話 075ー221ー1135
交通 阪急河原町駅より徒歩3分
営業 17時から24時
定休日 無休
千円ちょっとでした。
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四条『きみや』(京都)昭和歌謡あそび。

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それはまだわたしが神様を信じなかった頃。
9月のとある木曜日に雨が降りまして、そんな日に、素敵な彼が現れないかと思ったところへあなたが雨宿り。


 雨だった。
 セプテンバーレインだ。
 なぜだかしらないけど、さだまさしの『雨やどり』が頭の中でリフレインしている。とある木曜日の雨が、悪いのかもしれない。
 仕方がないので、雨やどりにせんべろ探検である。買ったばかりのスヌーピーのハンカチはないけど。
 小ぬか雨降る高瀬川にそって歩いていた。さがしものは、せんべろ屋だ。
 ふらふら歩いていると雨足が強くなってきた。九月の雨は冷たく、街角のポスターが、雨に破れかけている。
 細い路地に入ると、よさけな店があった。『きみや』と書かれた提灯が下がっている。せんべろ屋かもしれなかった。
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 店は常連さんでいっぱいだった。
 カウンターにおばんざいが並び、客もずらりと並んでいる。
「いらっしゃい」と、気さくそうな店主が云った。
 僕は、カボチャの炊いたんと麦のロックを注文した。
 右隣に、イッセー尾形のようなおじさんが、文藝春秋を読みながら瓶ビールを飲んでいる。左側は、常連さんたちのグループらしい。

「初めて?」と、店主が云った。
「そうです。雨が強くなって」
「すぐ上がるんちゃうか」
 駅も近いし、どうにかなるさ、である。
「どっから来たん?」と、右隣の太ったおじさんが声を掛けてきた。
「枚方です」と、僕が答えると
「俺も枚方からはるばる通ってるんや」と、おじさんが答えた。
 奇遇である。
「ここの麻婆うまいで」と、おじさんがすすめるので、僕はそれを頼む。
「豆腐が揚げなんや」と、店主が皿に麻婆豆腐を盛りながら云った。
 食べてみると、揚げが痺れる麻婆に絡んで旨い。
 改めて並んでいるおばんざいを見ると、どれも一手間かけているようだった。
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「長崎は今日も雨やったなぁ」と、奥に座っているおじさんが云った。
「出張かいな」と店主が訊くと、
「そうや、ここんとこ京都も雨ばっかりやなぁ」と、おじさんが云った。
「葉物が高こうなって」と、店主が困ったような顔をして云った。
「葡萄の酎ハイ」と、会社帰りらしいOLが云った。
 店主が、まな板に大粒の葡萄を取り出し、グラスにドカドカと葡萄を放り込む勢いで入れた。生トマト酎ハイも、ドカドカトマトを入れる。
 これでもかトマト!! である。
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「ここはええとこやで」と、右隣のおじさんが云った。
「そう思います」と、僕が答えた。
 左隣のイッセー尾形は、じっと文藝春秋に目を落としている。時折、アサリの酒蒸しを食べ、カランと貝を皿に落とす音がするくらいだ。誰とも話さない。我関せず、自由なのである。彼の隠れ家なのかもしれなかった。
「いらっしゃい」と、店主が云った。
「雨、止んだようや」と、椅子に座りながらスーツを着た男が云った。

 雨宿りは終わり。
 さだまさしの雨やどりは、もう、僕の頭の中から消えていた。
 店を出て、夜空を見上げると、ジンライムのようなお月様が出ていた。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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きみや
住所 京都府京都市中京区西木屋町通四条上ル紙屋町369ー1
電話 075ー221ー5821
交通 河原町駅から190m
営業 18時から23時30分
定休日 日・祝
2千円いかないくらいでした。
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撮影 田原慎一

祇園四条『京町』(京都)舞妓Haaaan!!!

まんべろ探検隊か!IMG_2792

 佐々木が准教授になった。
 というか、やっとなれた。
 お祝いに芸者をあげて飲もう。舞妓はんも。と、僕たちは調子に乗って先斗町にやってきた。
 せんべろ探検隊としては、危険な任務である。

「俺たちせんべろ探検隊が行っても大丈夫やろか」と、佐々木が云った
「僕の先輩に紹介してもらった店だから、安心しろ」
「俺も知ってる人?」
「祇園で顔のフミヒコさん」
「顔っちゅーても、キャバクラやろ、あの人の場合」
 まぁ、そーではある。けど「先斗町やったら京町がええで」と、フミヒコさんが教えてくれた店だから、確かだと思う。
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 日が暮れて、先斗町の赤い提灯に灯がともっていた。
「こんばんは」と、佐々木がすれ違いざまに芸者さんに声をかけた。
「こんばんは」と、彼女は京都弁で軽く会釈した。
 京都っていい。
「非日常だなぁ」と、佐々木が云った。
「幽霊も歩いていそうだ」
 薄暗い細い路地を歩いていると、幽霊や妖怪がひょっと現れるような気がした。
「ここらあたりなんだけど」と僕が云うと、
「あーあったあった」と、佐々木が『京町』の看板を見つけた。
 せんべろ屋とは違う緊張感が、看板にも漂っている。
「よう、おこしやした」と、店に入ると和装のおばさんが挨拶をした。
 ああ、京都である。
 僕たちは鴨川を臨む席に案内された。外に川床が造ってあった。今日は、天気が悪いからか、誰も座っていない。
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「もみじどす」と、芸子さんが花名刺を渡してくれた。
 佐々木は恐縮して固まっている。いつもの佐々木らしくない。
「舞妓さんからもらったお札を財布に貼ると、お金が舞い込む、名刺入れに貼ると、縁が舞い込む、いいますねん」と、もみじさんが云った。
「芸子さんからは?」と、佐々木が訊いた。
「もと、舞妓さんからもらったら、もっと、舞い込みますねん」
「そいつはいい」と、佐々木が早速財布にお札を貼っていた。
 どうぞ、と彼女は冷酒をついでくれた。
「お友だちどすか?」と、若い舞妓さんが僕の横に来てくれた。
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 舞妓はんがビールをついでくれる。
 佐々木が、舞妓はんにビールの返杯をした。
「おおきに」と、舞妓はんがビールに口をつけた。
「いくつなの?」と僕が訊くと、
「19どす」と、舞妓はんが答えた。
「子どもの頃からの友だちなんだ」と、僕は佐々木を見て云った。
「ずっと、遊べるのはうらわやましいわ」と、芸子のもみじさんが云った。
「今日は、こいつの出世祝いや」
「おめでとうさんどす」と、もみじさんが云った。
「なんのお仕事?」と、舞妓はんが訊いた。
「大学で、英文法を教えてるんだ」と、僕が云った。
「偉い先生はんなんやなぁ」と、もみじさんが云った。
「それが、准教授やねん。准がつきます」と、佐々木が照れくさそうに云った。
「お祝いに、踊らしてもらいます」と、もみじさんがニッコリ笑って云った。
 ハモが来た。
 京都らしい、華やかな盛りつけの前菜である。
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「こうやって鴨川が見える座敷で飲んでると、日本人でよかったなぁと思うよ」と、佐々木が云った。
 碗の蓋を開けると、鱧が品よく浮かんでいた。
「今日は、まんべろだな」と、僕が云った。
「無粋なこと、いうたらあかんえ」と、佐々木が云った。
「そうどすなぁ」と、僕もおどけてみた。
 お造りもハモが主役だ。
 今日は、ハモづくしだった。ハモに、キリッと冷えた冷酒が旨い。
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「せんべろ探検隊は危険な場所にも、果敢に入っていくから、探検隊や。せんべろ紹介隊とちゃうから、どこへでも行く」と、佐々木が云った。
 佐々木の云うとおり。僕たちは、探検隊なんだ。
「なんや面白そうな遊びやってはる?」
 そう云うと舞妓はんが、ビールを注いでくれた。
「なんの探検隊どすか?」
「千円でべろべろに酔える店の探検隊です」と、佐々木が云った。
「そいつをブログに書いてます」と、僕が云った。
「私、読むの好きや。見てみます」と、舞妓はんが云った。
 なんだか嬉しい。
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 芸子さんが、鴨川を背に踊っている。
「非日常だなぁ」と、佐々木が呟いた。
「非日常だ」
 せんべろ探検隊の危険な任務は続くのであった。大丈夫なのか、僕たち。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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京町
住所 京都府京都市中京区先斗町通四条上ル梅之木町156
電話 075ー223ー2448
営業 17時30分から22時30分
定休日 日曜・不定休
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
日本全国で巡礼する隊員たち。

大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@婚活中 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一
 

祇園四条『もみじ』(京都)はんなり立ち飲み。

今夜も、暑つおすなぁ。IMG_2907

 小雨が降ってきた。
 どこか雨宿りができるとこがないか、と僕は足早に木屋町を歩いていた。立ち飲み屋あたりがあればいいんだが、と物色していると見慣れぬ店を見つけた。

 看板に『もみじ』とある。
 中を覗くと、立ち飲み屋である。いい感じの雨宿り先だと、入ることにした。店内では、
白人たちが数人テーブルを囲んでビールを飲んでいた。
 僕も生ビールだ。
 さっと、愛想のよさげな店員が生ビールを運んでくる。
「いつからやってるの?」と僕が訊くと、
「最近はじめたんです」と、店員が僕の前にビールを置いて云った。
「ヘシコがあるんだ」
「市場に出る前のハマチが旨いよ」
 ヘシコとハマチを頼む。鯖も旨そうだ。
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 小浜あたりから、魚が入ってるのかなと、メニューを見て思った。
 昔は、鯖街道18里(72キロ)の道を歩いて、魚を持ってきた。重労働である。でも生鯖を塩につけて、京都まで運ぶとちょどよい塩加減になったらしい。
 ふと、だったら韓半島にも同じものがあるんじゃないかと、以前、調べたことがあった。
 すると小浜の対岸にヨンドクという漁港があって、内陸部のアントンが、丁度、小浜から京都の距離と同じくらいである。そこに、まさに韓半島の鯖街道があった。
 塩につけて歩いて運ぶと、アントンでいい具合に漬かる。同じ。
 なんだか面白い。一度、アントンの鯖を食べてみたいものだ。いつか、機会を作ろうと思う。
 鯖街道について調べていると、
 ヘシコなど、発酵食品は日本海側に多いことに気づいた。国境なんかなかった頃、大陸と日本は自由に行き来し、食べ物にその名残があるのかもしれない。
 そんなことを思いながら、ヘシコを食べてみる。
 塩加減がいい。冷たいビールにもいい。酒がススム。
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「それは旨いか?」と、リュックを背負った外国人が僕に訊いてきた。
「もちろん」
「魚?」
「塩に漬けた魚だよ。食べてみるかい」
「ありがとう」
 彼は慣れない手つきで箸を持つと、ヘシコを突いて身を取った。
 おそるおそる口に運ぶ。少し間を置き、
「いけるじゃないか。アンチョビだな」
 そう云うと、彼はヘシコを頼んだ。
 4人の外国人たちが、それぞれ、運ばれてきたヘシコに箸をつけていた。
「パスタにいれてもいい」と、髭を生やした白人の男が云った。
「日本のアンチョビだ。美味しいよ」と、腕に入れ墨をした男が云った。
「ライスワイン(日本酒)に合うと思うよ。きっと」と、リュックが云った。
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 鯖のへしこが、外国人に受けるとは思わなかった。
 なるほど、アンチョビだ。
 とすると、フランス人やイタリア人なんかも、好きかもしれない。
 京都の立ち飲み屋は、大阪とは違うようだった。うまく云えないけど、どて焼きとビールじゃなくて、ヘシコとビールだ。もちろん、いろんな店があるのだろうけど、京都でせんべろと大阪せんべろの違いは、面白いテーマだと思う。

 雨が止んだらしい。
 さて京都の夜は、これからである。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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もみじ
住所 京都府京都市中京区鍋屋町255 萩原ビル1F
電話 075ー241ー6256
交通 阪急河原町駅から徒歩約2分
   京阪祇園四条駅から徒歩約5分
営業 12時から23時
定休日 不定休
千円くらいでした。せんべろ店です。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
日本全国で巡礼する隊員たち。

大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@婚活中 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一

祇園四条『チアーズ』(京都)エレファントかしまし嬢。

IMG_1859ソーセージとビールと嬢。

「この辺りやったら、京極スタンドやろなぁ」と、佐々木が額の汗を拭いながら云った。
 空は曇天で、蒸し暑い大気が京都を包んでいた。せんべろ屋に行くには、まだ、日が高い。

 僕たちは、木屋町の細い道から河原町通に出て新京極商店街に向かった。汗がひとつ、背中を降りていく。
 祇園祭りのお囃子が商店街のスピーカーから流れていた。時折、舞妓さんとすれ違う。5人1組で行動する中学生たちは、修学旅行だろう。

「こんなところにビール屋ができてる」と、佐々木が云った。
「本場のソーセージ屋って、看板にでっかく書いてるで」と、僕が云った。
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「いつ出来たんですか?」と、早速、佐々木はソーセージを焼いている店主に尋ねた。
「もう、4年やってますよ」と、ブルーのキャップをかぶった店主が云った。グレーのティシャツを着た体格のいい男だ。米軍の海兵隊を退役しました。という、風情である。

「ビール飲むかい?」と、店主が云った。
「ソーセージは何がええの?」と僕が訊くと、
「生ソーセージかぶりつきながら、片手にビールが最高や」と、店主が云った。いい笑顔だった。
 僕たちはドイツのレーベンブロイと生ソーセージを注文した。ここはドイツだろう。まぁ、京都だけど。店の前にある丸テーブルに座って、キリッと冷えたビールをラッパ飲みである。
 スッと汗が引く。瓶で飲むと、やはり旨い。

「我々日本人は、アルコールが苦手や。モンゴロイドは、アセドアルデヒドの分解遺伝子を持ってへんヤツがおるねん。4人にひとりくらいは、あかんな」と、ビールを旨そうに飲みながら佐々木が云った。
 大学講師の佐々木らしい話し方だった。昔から基本オタクなのだ。

「俺たちは選ばれた人間ってことや」
 そう云うと、佐々木は生ソーセージにかぶりつき、ビールを飲んだ。
 アルコールが飲めてよかったと僕も思う。本当に。
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「サッキーやん、何してんの?」と、突然、僕たちは浴衣を着た娘たち3人に囲まれた。
「知り合いの嬢?」と僕が訊くと、
「人聞き悪いな。俺の大学の学生や」と、佐々木が云った。
「サッキー、ビールおごってよ」と、ショートミニの浴衣の娘が云った。
「こんにちは」と僕が挨拶すると、
「こんにちは」と、3人口をそろえて挨拶を返した。なるほど、そこは学生らしいのだった。
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「生ソーセージ美味しいですよ」と、店主が店の中から声をかけた。
 海兵隊風なのに、人なつこく商売上手なオヤジである。佐々木は、好きなの頼めと、3人に告げた。サンキューサッキーと、口々に云う。笑いが合間に入ってエレファントかしましいのだ。

「パトカーがいっぱいやったで」と、背の高い娘が云った。短い髪から活発な印象を受けた。スタイルもいい。
「殺人事件とちゃうか?」と、ショートミニが云った。
「なんでやねん、なんで殺人事件なんや」と、眼鏡女子が突っ込んだ。
「そらそーやろ、おまわりだらけやし。ドラマやったら殺人事件や」と、ショートミニが云った。
「ドラマちゃうしな」と、長身の娘が云った。
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 みんな片手にビールを持ってラッパ飲みである。
「今日はなんで集まってるんや?」と、佐々木が訊いた。
「サラリーマンと合コンや」と、ショートミニが云った。
「そりゃ大学名は、云わん方がええなぁ」と、佐々木が云った。
「当たり前やん。もてへんやん」と、眼鏡女子が云った。彼女は浴衣に慣れているのか、とてもキレイに着こなしていた。
 ごちそう様〜。と笑いながら云うと、3人は残ったビール片手に雑踏に消えていった。彼女たちがいなくなると、浴衣イベントのキャバクラで、これから会計って感じである。

「どう見てもキャバ嬢や」
「京大生やで」
「へぇ、優秀なんや」
「まぁ、それなりやな」
 佐々木は、そう云うとビールを飲み干した。
「なんの事件やったんかな」と、僕は云ってみた。
「俺らは、すべて世はこともなし、や。京極スタンド探しに行こうや」
 そう云うと、佐々木は席を立ってビール瓶を店に返した。

 店には修学旅行生が5人並んでいた。京都でソーセージなのか? とも思ったけど、旨いからいい思い出だ。僕らのせんべろ探しも続く。

<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>

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チアーズ(CHEERS)
住所 京都府京都市中京区河原町蛸薬師西入裏寺町594
交通 河原町駅から246メートル
営業 15時から20時30分(平日)13時から20時30分(土日祝)
定休日 水曜日
千円くらいで飲めます。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
日本全国で巡礼する隊員たち。
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 さなえ@婚活中
      隊員 みーやん@ギタリスト
      隊員 えま@野菜ソムリエ
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー
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撮影 田原慎一

祇園四条『壹銭洋食』(京都)ウルトラセブンの世界に迷い込む。

レトロな秘宝館で壹銭洋食をIMG_1909

 佐々木と僕はせんべろ屋を探しに、待ち合わせ場所の『東華菜館』を出た。

 いいせんべろ屋はないかえ。と、僕たちは四条大橋を渡り八幡神社方面へ向かった。
 せんべろ屋の匂いがしないか、と探りを入れながらである。
 時々、浴衣を着た女の子たちとすれ違う。祇園祭りも、もう、すぐなのだなぁ、と思う。どこからか祇園囃子も聞こえてくる。
 夏到来なのである。

「あそこに入ってみよう」と、佐々木が云った。
 彼の視線の向こうに『壹銭洋食』があった。大きな看板が掲げてある。
「せんべろ屋の匂いがするのか?」
「せぇへんけど、おもろそうな匂いと、旨そうな匂いがするな」と、佐々木が云った。
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 店内に配置されたマネキンが、僕は怖かった。浴衣を着た女性のマネキンである。客は、2、3人いた。ひとりでビールを飲んでいる太ったおジイさんと、観光客らしい若いカップルである。
「『アンドロイド0指令』って、知ってる?」
 席に座ると佐々木が云った。女の子の店員が注文を取りに来たので、僕たちはビールを頼む。
「メニューはありますか?」と、佐々木が尋ねた。
「ここにあるよ」
 と、僕がメニューを開くと『御品書き あへて申せど ただ是一品 ひらに御免』と書いてあった。ずいぶん立派な表紙だけど、メニューとしての役割をはたしてないではないか。いさかかすべっていると思う。まぁ、味なのだろう。
 つまりは、お古乃美焼き(お好み焼き)だけらしい。じゃぁと、お古乃美焼きを注文した。
「なんで壹銭洋食なん」と、佐々木が店員に訊いた。
「昭和初めに、ソースをかけたらなんでも洋食だった時代があったらしいです。壹銭で食べられる洋食やから、壹銭洋食です」と、店員はスラスラと答えてくれた。よく訊かれる質問なのだろう。
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「ウルトラセブンだろ」と、僕は佐々木にさっきの質問に答えて云った。
「そう、マネキンが動き出す話や」
「なんとなく覚えてるわ。なに星人だっけ?」
「チブル星人や。タコみたいなやつ。あのデザインは秀逸やな。チブル星人のじいさんが子どもを操って世界征服を企てるんや。深夜のデパートでおもちゃが攻撃してくるシーンなんか、トイ・ストーリー先取りや」と、佐々木はオタクぶりを発揮して云った。
「そんなんで世界征服ができるの?」
「アホやなぁ、できるわけないやろ。あいつらは愉快犯や」
 佐々木は柱に刺さっている壹銭洋食の名刺を一枚抜き取った。レトロな挿絵がついた名刺である。しげしげと見て納得したのか、名刺をスッと元の場所に戻した。
 
 ビールが来たので乾杯をした。グラス持ちながら暗い店内から外を見ると、観光客を乗せた人力車が通り過ぎて行くのが見えた。一台、二台と続いて移動している。表は人通りが多い道に面していた。
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「僕は、インディージョーンズを思い出すよ」
「ああ、スカルの王国やな」
「ハリソンフォードが田舎町に迷い込んだら、人間がみんなマネキンなんだ」
「そうそう、スピーカーから核実験のカウントダウンのお知らせが入る」と、すかさず佐々木は続けた。
「後ろに座ってる女の子人間やないな。いま、気づいた」と、僕は云った。
「うわ、怖ぇな」
  ほどなくお古美焼きが来た。箸で割ってみると、キャベツや九条ネギ、コンニャクやチクワがぎっしりつまっていた。ソースの上には刻み海苔がパラパラとかけてある。
 箸で割って食べると、駄菓子屋の店先で売っていそうな懐かしい系の味がした。甘辛いソースの香りとサクサクキャベツ味が口に広がる。
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 僕の後ろのマネキンが、何か云いたげに座っている。チブル星人のじいさんが手をかざすと、今にも動き出しそうだった。安い秘宝館のようでもあるのだった。
 深夜、ひとりで飲んでたら、怖いよなぁ。きっと。
 僕たちの探検は続く。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>

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壹銭洋食(いっせんようしょく)
住所 京都府京都市東山区祇園四条通縄手上ガル祇園町北側238
電話 075−533−0001
交通 京阪祇園四条駅より徒歩1分
   阪急河原町駅より徒歩3分
営業 11時から翌3時(月から土)10時30分から22時(日・祝)
定休日 無休
ふたり2千円でおつり。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
日本全国で巡礼する隊員たち。
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 さなえ@婚活中
      隊員 みーやん@ギタリスト
      隊員 えま@野菜ソムリエ
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命

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撮影 田原慎一

祇園四条『東華菜館本店』(京都)鴨川等間隔の恋人たち。

祇園祭りの囃子も流れる、夏。251148_127757280637158_5334444_n

 四条大橋のたもとにある、壁に素敵なレリーフがある古いビルで待ってる。と、僕は友人の佐々木に伝えていた。
 この店なら、まず、迷うことがない。重宝している待ち合わせの場所だった。
 丁度、鴨川の川床が出来ていて、
「外に席をとっていい?」と、蝶ネクタイの店員に云うと、店員は黙って川床に僕を案内をしてくれた。
 席に座ると、川上から涼しい風が吹いていた。深呼吸をすると川と初夏の香りで、肺がいっぱいになる。。遠くから、祇園祭りの鐘の音がした。街中のスピーカーから流れる祇園囃子である。

 女の子が注文を取りに来た。眼鏡をかけた化粧気のない若い娘だ。
 僕はビールを頼む。それと蒸し鶏。
 これから京都でせんべろ探検をしようというのだから、安くて旨い皿を少しだけ、だ。
「ワカリマシタ。チョトオマチクダサイ」と、女の子が云った。まだ、日本語が危なっかしい中国人の娘である。
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 東華菜館は、明治時代は矢尾政レストランという西洋料理屋だったという。
 現在の建物は、昭和2年に開店したスペイン料理の店を、戦後、中国人が買い取って『東華菜館』となったらしい。
 僕は古いビルの壁に描かれている装飾を眺めるのが好きだった。東華菜館では、ホタテやタコ、サカナがユーモラスに彫ってある。京都には、こころ惹かれる建築物が多いのだ。
 余談だけど村上もとかの漫画で『龍-RON-』という作品がある。明治時代、武道専門学校に通う主人公・押小路龍の活劇である。四条大橋のワンシーンに、この東華菜館が登場する。今と、ほとんど変わらない。不思議な既視感だった。
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 ビールと蒸し鶏が運ばれてきた。
 鴨川のせせらぎの音がずっと流れている。河川敷を見ると、鴨川では恋人達が等間隔に座っていた。いつもと同じ間隔だ。僕も女の子と来たとき、同じように並んでいたのを覚えている。座ると納得する距離感なのである(やってみてください)。
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 しばらくビールを飲みながら本を読んでいると、佐々木がやってきた。
「もう、飲んでるんや。俺もビール」と佐々木はすかさず、手を挙げてさっきの女の子を呼んだ。
「ワカリマシタ」と、女の子はぎこちなく微笑んで云った。
 佐々木はジーンズに地味な青いシャツ着ていた。京都の大学で英文法を教える講師だった。小学校から古い友人である。
「エレベーターに乗ってみたいな」と、佐々木が云った。
 東華菜館にある日本最古のエレベーターに、である。古い映画『死刑台のエレベーター』にでてきそうなヤツだ。
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「後で、乗せてもらおう」と、僕が云った。
「今日は、どこから攻める?」
「街を歩いて、匂いで決めよう」
「京都のせんべろは、手強いで」と云うと、彼は蒸し鶏をぱくっと食べ、ビールをひとくち飲んだ。
 京都せんべろ探検は、これからなのである。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>

東華菜館本店
住所 京都府京都市下京区西石垣通四条下ル斎藤町140−2
電話 075−221−1147
交通 京阪本線祇園四条駅3番出口より徒歩3分
   阪急京都駅河原町1番B出口より徒歩1分
営業 11時30分から21時30分
定休日 無休

料金は、ふたりで3千円くらい。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
日本全国で巡礼する隊員たち。
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 さなえ@婚活中
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      隊員 えま@野菜ソムリエ
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