せんべろ探検隊のまんべろ忘年会。
能楽師・辰巳満次郎氏をお誘いし、忘年会をしてきた。
秋の中秋の名月『千人の月見の宴』で、舞っていただいたご縁である。
当初僕は、四条大橋袂にある『東華菜館』などはいかがかと伝え、満次郎さんに「どこかよいところはございますか?」と、尋ねてみた。
「辰巳稲荷の横に、萬治郎という水炊き屋がございます。そこは、なかなか予約がとれない店ですが」と、教えていただいた。
それはさぞや、と思い。僕は、萬治郎に予約電話をしてみることにした。
「予約を入れたいのですが」
「いつでございますか?」と、女性が云った。
「12月の15日、19時からですが」
「生憎と、その時期は混んでいまして、お店には以前来られたことがございますでしょうか」
「能楽師の辰巳満次郎さんから、ご紹介いただいたのですが」
「女将に代わらせていただきます」
しばらくして、女将が電話口に出た。
「席をお取りさせていただきます」
京都らしいのである。
そうこうしているうちに、当日を迎えた。
陽は落ち、あたりはすっかり暗い。ポツリと小雨が降り、道路は濡れ光っていた。僕たちせんべろ探検隊は鴨川沿いから、白川の上流へ歩いていた。みーやんとサナエである。
ほどなく『辰巳稲荷』が姿を現す。
若い外国人の男性が三脚を据えて、辰巳稲荷を何枚も写真を撮っていた。僕は、遠慮がちに辰巳稲荷の前に進み、手をあわした。なんでも芸事の神様だそうだ。
頼み事がいっぱいありそう。
「よう、おこしやした」
萬治郎に着くと、女将が迎えてくれた。築150年の古い屋敷だ。凜とした空気が漂っている。
ジリリリンと、黒電話が鳴った。
店員が電話に出る。現役の黒電話を数十年ぶりに見たように思う。
磨き上げられた木の廊下を通り、六畳の部屋に案内された。
ガラスの入った襖から、鯉が泳ぐ池が見える。池の向こうの部屋では、賑やかに宴が開かれていた。
ほどなく、満次郎さんが到着した。
部屋に入るなり、
「玄関で、辰巳満次郎です。と名乗っても、誰も驚かないんだよ」と、満次郎さんが云った。
「僕が満次郎さんが到着しますと、伝えましたから」
「そうですか」と、満次郎さんが残念がる。人を楽しませるのが、好きなのだろう。
僕たちは、ビールで乾杯をした。
「肝の甘辛煮です」と、京言葉で仲居さんがテーブルに小皿を並べながら云う。
僕は、レバーが苦手なのだが、ここのは旨かった。新鮮で上質の肝なのだ。
女将が鶏スープを、鍋からすくって分けてくれる。
僕は、冷酒を注文した。この鍋には日本酒がいい。
「昔、父親に連れられて、よくこの店に来ていました」と、満次郎さんが云った。
「おおきに」と、女将が微笑む。
どうぞ、と僕もスープを女将からいただく。すこぶる旨い。
「辰巳稲荷の隣で、萬治郎ですから、深いご縁があると思いました」と、女将が云った。
名前で予約を受けたんだ、と僕はそこで気づいた。
「常連かと思ってました」と、サナエが不思議そうな顔をして云った。
水炊きが煮え、宴が始まると能の興味深き話しが続いた。
「靴下は、どちらの足から履きますか」と、満次郎さんが訊いた。
僕は、右からだと答えた。みーやんも右から、サナエは左。サナエは左利きなのだ。
「能では、左から履きます。歩き出すときも、左。昔の作法が、能に伝わっているのです」
「春日大社の宮司さんに似た話を伺ったことがあります。真っ暗な部屋で、一人だけに伝える儀式があって、それはどんなアレンジも許されない。作法を変えてしまうと、もとのものが分からなくなりますから、と仰っていました」と、僕が云った。
能にも同じなのかもしれない。
興が乗り、僕たちは閉店近くまで過ごさせていただいた。
店を出ると、雨は上がり、雲の間から星が見えていた。
「もう、一軒行きませんか」と、満次郎さんが云った。
京の夜は、これからである。
<記事 大阪せんべろ探検隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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水炊き 萬治郎
住所 京都府京都市東山区新橋通大和大路東入元吉町58
電話 075ー561ー1654
交通 祇園四条駅から徒歩5分
営業 17時から19時30分
定休日 5月から9月 2月3日・月曜
コースが6千円。まんべろです。けど、大満足のお店でした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
隊員 サナエ@女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG もーちゃん@トラベラー
オーシタ@スリランカ アサミ@セレブ
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
隊員 ひろみ@デザイナー ナホ@バイオリニスト
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一
能楽師・辰巳満次郎氏をお誘いし、忘年会をしてきた。
秋の中秋の名月『千人の月見の宴』で、舞っていただいたご縁である。
当初僕は、四条大橋袂にある『東華菜館』などはいかがかと伝え、満次郎さんに「どこかよいところはございますか?」と、尋ねてみた。
「辰巳稲荷の横に、萬治郎という水炊き屋がございます。そこは、なかなか予約がとれない店ですが」と、教えていただいた。
それはさぞや、と思い。僕は、萬治郎に予約電話をしてみることにした。
「予約を入れたいのですが」
「いつでございますか?」と、女性が云った。
「12月の15日、19時からですが」
「生憎と、その時期は混んでいまして、お店には以前来られたことがございますでしょうか」
「能楽師の辰巳満次郎さんから、ご紹介いただいたのですが」
「女将に代わらせていただきます」
しばらくして、女将が電話口に出た。
「席をお取りさせていただきます」
京都らしいのである。
そうこうしているうちに、当日を迎えた。
陽は落ち、あたりはすっかり暗い。ポツリと小雨が降り、道路は濡れ光っていた。僕たちせんべろ探検隊は鴨川沿いから、白川の上流へ歩いていた。みーやんとサナエである。
ほどなく『辰巳稲荷』が姿を現す。
若い外国人の男性が三脚を据えて、辰巳稲荷を何枚も写真を撮っていた。僕は、遠慮がちに辰巳稲荷の前に進み、手をあわした。なんでも芸事の神様だそうだ。
頼み事がいっぱいありそう。
「よう、おこしやした」
萬治郎に着くと、女将が迎えてくれた。築150年の古い屋敷だ。凜とした空気が漂っている。
ジリリリンと、黒電話が鳴った。
店員が電話に出る。現役の黒電話を数十年ぶりに見たように思う。
磨き上げられた木の廊下を通り、六畳の部屋に案内された。
ガラスの入った襖から、鯉が泳ぐ池が見える。池の向こうの部屋では、賑やかに宴が開かれていた。
ほどなく、満次郎さんが到着した。
部屋に入るなり、
「玄関で、辰巳満次郎です。と名乗っても、誰も驚かないんだよ」と、満次郎さんが云った。
「僕が満次郎さんが到着しますと、伝えましたから」
「そうですか」と、満次郎さんが残念がる。人を楽しませるのが、好きなのだろう。
僕たちは、ビールで乾杯をした。
「肝の甘辛煮です」と、京言葉で仲居さんがテーブルに小皿を並べながら云う。
僕は、レバーが苦手なのだが、ここのは旨かった。新鮮で上質の肝なのだ。
女将が鶏スープを、鍋からすくって分けてくれる。
僕は、冷酒を注文した。この鍋には日本酒がいい。
「昔、父親に連れられて、よくこの店に来ていました」と、満次郎さんが云った。
「おおきに」と、女将が微笑む。
どうぞ、と僕もスープを女将からいただく。すこぶる旨い。
「辰巳稲荷の隣で、萬治郎ですから、深いご縁があると思いました」と、女将が云った。
名前で予約を受けたんだ、と僕はそこで気づいた。
「常連かと思ってました」と、サナエが不思議そうな顔をして云った。
水炊きが煮え、宴が始まると能の興味深き話しが続いた。
「靴下は、どちらの足から履きますか」と、満次郎さんが訊いた。
僕は、右からだと答えた。みーやんも右から、サナエは左。サナエは左利きなのだ。
「能では、左から履きます。歩き出すときも、左。昔の作法が、能に伝わっているのです」
「春日大社の宮司さんに似た話を伺ったことがあります。真っ暗な部屋で、一人だけに伝える儀式があって、それはどんなアレンジも許されない。作法を変えてしまうと、もとのものが分からなくなりますから、と仰っていました」と、僕が云った。
能にも同じなのかもしれない。
興が乗り、僕たちは閉店近くまで過ごさせていただいた。
店を出ると、雨は上がり、雲の間から星が見えていた。
「もう、一軒行きませんか」と、満次郎さんが云った。
京の夜は、これからである。
<記事 大阪せんべろ探検隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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水炊き 萬治郎
住所 京都府京都市東山区新橋通大和大路東入元吉町58
電話 075ー561ー1654
交通 祇園四条駅から徒歩5分
営業 17時から19時30分
定休日 5月から9月 2月3日・月曜
コースが6千円。まんべろです。けど、大満足のお店でした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
隊員 サナエ@女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG もーちゃん@トラベラー
オーシタ@スリランカ アサミ@セレブ
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
隊員 ひろみ@デザイナー ナホ@バイオリニスト
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一