行け! せんべろ探検隊。

千円でべろべろに酔える店を彷徨う、せんべろ探検隊ストーリーです。探検隊だから、時には、危険なまんべろも。いざ、せんべろ劇場へ! まぐまぐで、メールマガジンを発行してます。ほぼ週末に人気記事を発送してます。

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2016年01月

両国『ゆきだるま 両郷部屋』(東京)久しぶりのジンギスカン。

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 アライが港署に引っ張られたのは、大晦日の夕方だった。
 ノックの音がして、探偵事務所の扉を開けるとお馴染みの身分証明書をかざし、男たちが部屋に入ってきた。白髪交じりの年長の男が先に入り、アライの顔を凝視した。
 若い刑事は、ドアの前に立っている。まぁ、逃げられないようにということだろう。

「今日もお仕事ですか?」と、年長の男が慇懃無礼な口調で云った。
「警察には、大晦日はないみたいだな」
「悪いやつが多くてね」と、白髪の男が云うと、ドアの前に立っている背の高い刑事が薄ら笑いを浮かべた(ように見えた)。それは自嘲気味の笑いなのかもしれない。
「オクムラカオリが、殺されたのは知っていますね」
「新聞で読んだよ。気の毒なことだ」
「オクムラが、外国で殺されたことは?」
「そいつは、知らない」
 おそらくアルゼンチンで逃げられなかったのだろう。まったく、気の毒な元夫婦だ。
「そういう態度ね」
 白髪の刑事が目配せすると、若い刑事がアライのベルトを後ろから右手で握った。
「任意だろう」と、アライが云うと
「ほう、面白いこと云うじゃないか」と、白髪の刑事がアライのレバーにいっぱつ入れた。どこが急所かを知り抜いた狡猾なパンチだ。
 こういう権力を持ったヤカラには、抵抗はしないほうがいい。経験ということだった。

 港署の取調室にはグレーの事務机がひとつと、安っぽいパイプ椅子が二つ並べてあった。アライは、奥の椅子に座って待つように云われた。座ると、ギシギシと嫌な音がする椅子だ。窓もない息苦しい部屋だった。
 暫くすると刑事がひとり入って来た。二人じゃないところを見ると、任意同行は本当らしい。
 刑事は机に座って、アライの向かいに座った。
「大晦日にご足労だね」と、刑事が云った。
「お仲間に、いっぱつ入れられたよ」
 アライは、お腹をさすりながら云った。
 まだ、レバーが傷んでいた。アライにいっぱつ入れた白髪の男は、昔ながらの古い刑事だろう。人の弱みや、証拠が残らない痛めつけ方に精通している。だけどそんな刑事は絶滅はしない。必要だからだ。
「アライさんですね。張と云います。そんな報告は聞いてませんが、伊東くんは何か勘違いでもしたのかな」
 体格のいい年配の張刑事は、とぼけたことを云った。ネクタイの趣味もいい。腕に機械式のエポスをしていた。課長くらいだろうか。
「話すことはないよ。帰らせてくれ」
「なら、任意を重要参考人としていてもらおう」
 ドアが開いて、先ほどの若い刑事が入って来た。黙って、ドアの近くに立っている。
「訊きたいことが山ほどあるんでね」と、さっきとは違う凄みのある口調で張刑事が云った。
「俺は、何も関わっちゃいないぜ」
「奥さんが殺された日だよ。おまえとオクムラが何をしていたかじっくり訊きたい」
 そう云うと、張刑事は部屋を出て行った。

 そこからは若い刑事と交代だった。
 それから刑事が代わる代わる質問をくりかえした。表情が何もないんじゃないかと、思われる刑事もいた。時には暴力的な刑事も。
 刑事とアライが座っている事務机は、刑事の側には足を入れる事ができるが、アライの側は、スチールの板があって足を入れる事ができないようになっていた。膝があたる二カ所の塗装が剥げているのは、同じように何時間もここで取り締まりを受けたヤツらがいるからだろう。それを見てアライはうんざりした。
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 帰されたのは、年が明けて5日のことだ。
 連日、窓のない部屋での尋問は気が滅入ったが、ある日、鉄格子の窓がある部屋に通された。
 その日は、お茶も出て、若い刑事とほぼ雑談だった。で、突然「帰っていい」と、告げられ港署から追い出された。
 適正な取り調べをした警察のアリバイ作りだろう。よくあることだ。
 帰ると、事務所とマンションに家捜しをした形跡があった。ヤツラは家捜しが重要だったのかもしれない。
 俺は泳がされてる。
 とりあえずシャワーを浴びた。
 警察の飯は、いわゆる臭い飯ではないが(ヨウグルトとかオヤツが付く)、臭い飯というのが似合う。どこか臭いんだ。
 腹ごなしに両国にあるジンギスカンでビールを飲もう。と、馴染みの飲み屋に顔を出すことにした。風が冷たい。夜空に月がひとつでていた。
 
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「よう」と、店主に挨拶をして中に入ると、ジンギスカンが焼ける匂いが漂っていた。お腹がぐぅと反応する。
 アライはビールと肉を注文した。
「ひどい顔だな」と、店主が云う。
「そうか」
 さっき鏡で髭を剃るときは、そんな風には見えなかったが、確かに俺はひどく疲れていたんだと思う。
 店主は、自分のビールを注ぎアライのテーブルに座った。
 とにかく乾杯だ。で、ぐっと、半分以上を飲んだ。旨い。
「精をつけないとな」
 サービスだ、と云うと、つけ麺を店主が追加した。
「明けましておめでとう」
 ああ、正月だったな。とアライは思った。
 店主に携帯電話を借りて、チヅルに連絡を入れた。生憎、留守電になっていた。
 当分、事務所には来るな、と伝言を残した。
 アライは、肉を熱くなった鉄板に載せ、ビールを飲んだ。
<取材 アラピー@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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ゆきだるま 両国部屋
住所 東京都墨田区両国3ー24ー1 尾崎ビル3F
電話 03ー6751ー9929
交通 JR両国駅東口より徒歩1分
営業 17時から23時20分(火曜日から日曜日)
定休日 月曜日
ひとり3000円くらいです。ビールにジンギスカンが旨い。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
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掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
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盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス

※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一

枚方『そば切り 天笑』(大阪)ミシュランの蕎麦。

酒と蕎麦と幽霊。IMG_5176


 幽霊を連れて、蕎麦を食べに行った。
 チサトという若い女の幽霊だ。やり残したことで、成仏できないと言う。
「やり残したことってなんなの?」
 そば切り『天笑』のテーブル席に着くと、僕は質問をした。
「いろいろあんのよ幽霊にも」と、チサトははぐらかす。
 僕は、お酒を二種類注文した。ひとつは、ちさとの分である。
「ふたつ同時に出してください。飲み比べたいから」と、僕は怪訝そうにしている店員に云った。店員にはチサトが見えないから。
 幽霊が、お酒を飲んだり食べたりすることも、みんなは知らない。
 でも、お供えするってことは、実は、分かっているのかもって思うことがある。

 去年の秋頃、チサトが化けて出だした。
 生前は、知り合い程度だったが、死んでからは毎日のように顔を出す。僕の事務所に来てパソコンでなにやらしてるし、ソファーに寝転がって本を本でたりもする。ことによると、生きているんじゃないかと、錯覚を覚えるほどだった。
「気が散るから、消えてくれない」と僕が言うと、本当に消えるから幽霊なんだろう。たぶんね。
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 お酒が来た。
 僕のアテはメザシ。チサトには漬け物がついていた。
「蕎麦を打ってゆであがるまで、酒を飲んで待ってるのが粋ってもんだ」
「そうなの? でも、お酒を飲んで待つってのはいいわね」
 僕が、チサトのぐい飲みにお酒を注ぐと、彼女は美味しそうに杯を傾けた。
「浅草に、大黒屋って蕎麦屋があるんだ。あそこは、蕎麦がでてくるまで酒を飲みながら鍋を食べて待つ。なかなかでてこない。蕎麦を食べに来たんだけど、蕎麦で〆る勢い」
「蕎麦を食べに来てるのに?」
「そう、それくらいでてこない。で、蕎麦の量ががちょっぴりなんで、お代わりしたくなるけど、もはやできない。お代わりなんかしたら、また、鍋からやり直しだ」
「ここもそう?」
「違うけど、酒を飲みながらって待つのはいいもんだよ。江戸時代は、蕎麦屋は飲み屋だったんだ。時代劇で、蕎麦屋で飲んでたりするだろう」
「くだらないことに詳しいのね」と、チサトは手酌でぐい飲みに酒を注いだ。
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 店員が来て、そろそろお蕎麦をお持ちしましょうか? と、僕に尋ねた。
 鴨汁蕎麦を二つ、僕は注文した。
「大盛りですか?」
 いえ、大盛りではなくて二つね。
「なんか申し訳ないな」と、チサトが言った。
「いいんだよ」と僕が言うと、
「分かりました」と、店員が答えた。
 なんか、話しがつながっているのが僕だけ可笑しい。
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「前から思ってたんだけど、幽霊が飲んだり食べたりした後って、気が抜けたような味がするんだ。食べ物の魂がなくなるからかな」
「そんなの分かんないよ」
 そう言うと、チサトは酒をお代わりした。
 気づかない店員に、僕がお代わりを伝える。仕方なく、チサトが飲んだ酒を、僕も飲む。やっぱり、気が抜けているように思う。
「今年の抱負だけど」
「幽霊に抱負なんてあるの?」
「やり残したことを、ひとつひとつ片づけるんだ」
「幾つもあるのかよ」
 これでは当分、付きまとわれそうだ。やれやれ。
「牡丹灯籠って落語で、幽霊に憑かれて死んじゃう話しがあるだろ」
「そんなの知らないよ」
「そんなこともあるのかなって思ってさ」
 取り憑かれて死にたくはない。
 チサトは、ふーんって言いながら、僕の杯をひょいと奪って飲み干した・
 あ、っと言うと、へへへと笑う。
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「蕎麦屋で飲むのも、やり残したことかな」
 こいつに取り憑かれて死ぬなんてことは、なさそうだな、と笑顔を見ながら思った。
 僕は、旨い鴨汁蕎麦と、気の抜けた鴨汁蕎麦を食べて(とはいえ、美味しい)店を出た。
 チサトに話しかけようと振り向くと、姿がない。
 さっさと、成仏してくれよ。と思ったけど、それはなさそうだ。たぶん。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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そば切り 天笑
住所 大阪府枚方市岡南町10ー30
電話 0728ー46ー7166
交通 京阪本線枚方市駅から徒歩5分
営業 11時から14時30分 17時30分から19時
定休日 水曜日・木曜日
ひとり2000円くらいでした。
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