行け! せんべろ探検隊。

千円でべろべろに酔える店を彷徨う、せんべろ探検隊ストーリーです。探検隊だから、時には、危険なまんべろも。いざ、せんべろ劇場へ! まぐまぐで、メールマガジンを発行してます。ほぼ週末に人気記事を発送してます。

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2015年10月

錦糸町『太田屋』(東京)下町のくじら屋。

カバンの中見。12087593_910738022352063_12316290_n

 午後9時、週末の新宿駅は人、ヒトでごった返していた。
 アライは、チヅルを連れオクムラが指定するコインロッカーを探していた。西口からは離れた場所にあるのロッカーだ。
「コインロッカーってさ。二、三日しか預けられないんじゃない」と、チヅルが訊いた。
「前払いすれば何年でも預けていられるコインロッカーというより、小さなトランクルームがあるんだよ」
「何が出てくるかワクワクするね」
「だから勝手に、ワクワクしないでくれ」
 
 都市開発に取り残されたようなゴミゴミとした一画に『塚本コインロッカー』と白地に赤いペンキで書かれた看板を掲げているビルが見えた。赤い文字が薄くなっていて、ところどころ剥げている。ビルの壁には、地方都市の路線図のような修繕跡が走っていた。
「いい味出してんなぁ。大道具が頑張ってる感じ」と、チヅルが云った。
「芝居や映画じゃねーんだ」と、アライが云った。
「やぶにらみの怖そうなジイサンがやってるんだよ。きっと」
「馬鹿云うなよ」と、アライは呆れていった。
 チヅルは思い込みが激しいから困る。

 塚本コインロッカーは、狭い階段を上がった二階にあった。
 上がると年季の入った木製の扉があった。開けると音がギィっと鳴り、受付があった。
 受付には、ジイサンがひとりパイプ椅子に座って新聞を読んでいた。
 アライが受付に立つと、
「コインロッカーは一階だよ」と、やぶにらみのジイサンが顔を上げて云った。
 使い古したサンダルに、ズボンと白い開襟シャツを着ていた。愛想も悪そうだ。
「ほら」と、チヅルが得意そうに云った。
 アライは、オクムラから預かっている13番と書かれている鍵を見せた。
「ああ、そっちの客かい」と、不機嫌そうに云うと、ゆっくりジイサン立ち上がっり、引き出しから鍵を選んで、受付の後ろにあるドアを開けた。
「後は、勝手にやってくれ」と気怠そうに云い捨て、また、パイプ椅子に腰掛け新聞に目を落とした。

 ずらりとロッカーが並んでいた。天井の蛍光灯がひとつ切れそうになっていてチラチラを点滅している。
「きっと、ここにはろくでもないものが集まってるんだよ」と、チヅルが小声で云った。
「黙ってろ」と、アライも小声で答えた。
 13番のロッカーを見つけて開けると、茶皮のブリーフケースが入っていた。留め金も黄金で奢った高級鞄だ。取り出して手にすると、意外と軽い。とはいえアライにとっては、何が入っているかは、どうでもいいことだった。
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「鯨屋に行こう。馴染みの店なんだ」と、アライが云った。
「鯨? 嬉しい。あたし食べたことないの」と、チヅルが云った。
 アライがよくいく錦糸町の『太田屋』だった。
 新宿よりテリトリーの下町の方が、落ち着く。
 店は適度に混雑していたが、一度は見たことのある客ばかりだった。誰かにつけられてないだろうが、ここなら安心だ。
 チヅルが、ビールふたつと鯨ユッケと鯨かつを頼む。鯨が珍しいのだろう。

 ビールが来た。
「鞄、開けようよ」と、チヅルが云った。
「俺の仕事は、預かるまでだよ」
「馬鹿じゃないの。爆弾が入ってたらどうすんの」
 アライはチヅルを無視してビールを飲んだ。
 チヅルは、チっと舌打ちをした。
「お嬢さんは舌打ちなんかしないもんだ」
「お嬢じゃないから、舌打ちすんだよ」と、チヅルがビールをぐいっと飲んで云った。
「鯨ユッケ食うかい」
「不思議な肉ねぇ。美味しい」と、ひとくち食べてチヅルが云った。
「肉豆腐も頼もう、腹が減ってる」と、アライが云った。
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「開けないから、ちょっと貸してよ」と、チヅルが云った。
 アライはしばらく考えてから、チヅルに鞄を渡した。すると、チヅルは鞄に耳を当てて、両手で鞄を振った。
「爆発しちまうぞ」
「時計の音はしないみたい。カチカチ。何か箱のようなものもあるわ」
 どうも危なっかしい。けど、アライはチヅルに鞄を預けることに決めていた。事務所にあるより安全だからだ。
「中を絶対に見るな。開けるな。それから振るな」と、アライは念を押した。
「へいへい」と、チヅルが面倒くさそうに云った。
 椅子の横に鞄を置いてビールを飲み、鯨カツを食べた。
「パンドラの鞄だから?」
<取材 アラピー@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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太田屋
住所 東京都墨田区緑4ー20ー9
電話 03ー3631ー0501
交通 JR錦糸町駅より徒歩8分
営業 17時から24時
定休日 日・祝
ひとり三千円くらいでした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@元女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab なるみ@おかえり
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
         沙也加@すくもー 乾@八尾YEG トモコ@吹田YEG
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ! ユウシ@会津YEG
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス

※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一

大井町『らんまん』(東京)ウニの天ぷらを立ち食い寿司で。

やばい仕事。12167497_912015962224269_1124463724_n

「今月の21日が何の日か知ってる」と、チヅルが云った。
「耳の日とか包丁の日とか、どうぜ、くだらねぇやつだろう」と、アライが云った。
 アライは、チヅルを連れて大井町に来ていた。チヅルに無理矢理雇わされたのだったが、意外と重宝するので最近は助手に使っていた。
 クライアントの受けもいいし、仕事も早い。

「マーティーがやってくる日よ」と、チヅルが云った。
「誰だい、それ」
「バック・トゥ・ザ・フューチャー観てないの? 馬鹿なの? 死ぬの?」
 ただ、チヅルは口が悪い。
「昔、観たよ。1955年にタイムスリップするやつ。ちょっと、まって」
 アライはそう云うと、タバコをポケットから出して火をつけた。
「ここだよ」と、アライが云った。
 ツタが鬱蒼と絡んでいる喫茶店だった。かろうじて入り口が刈り取られて、出入りができるくらいのツタだ。店名も蔦谷だった。
「いまから、俺は中で男と会う。話しはすぐすむ。ほんの10分くらいだろう。男が出てきたら、ヤツの写真を撮ってくれ。それだけでいい」
「やばい仕事?」と、チヅルは興味深そうに訊いた。
「保険の調査資料だよ。犯罪じゃないし、危険な仕事でもない」
 そう云うと、アライは携帯灰皿でタバコを消して、店に向かった。

「うまく撮れたかい?」と、アライはチヅルに訊いた。
「ごめん、撮れなかった。カメラがうまく作動しなくて。でも、こんな男でしょう?」
 そう云うと、チヅルは紙に男の似顔絵を描いた。そっくりだった。
「伊達に画家じゃないんだな。でも、写真じゃないと、だめなんだよ」と、アライは残念そうに云った。
「へへ、本当は撮ったんだ」と、チヅルはカメラの画像を自慢げにアライに見せた。
 似顔絵そっくりの男が写っていた。
「こんな写真役立つの?」と、チヅルが訊いた。
「まぁね。そうだな、寿司でもつまもう」
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 『らんまん』の看板が見えた。さかなとワインと天ぷらと書いてある。
「寿司屋なの? 天ぷら屋なの?」
「江戸時代からの伝統で、スタンディング寿司屋なんだ」
「立ち飲みかよ。しけてんなぁ」
 そう云いながら店に入ると、客が一斉にチヅルを見た。おっ、とチヅルが一瞬ひるんだが、気にせずカウンターについた。

「オヤジ、いつもの」と、チヅルが云った。
「お嬢さん、初めての店ではいつものはないよ」と、店員が云った。
 動揺しているらしい。可愛らしいところもあるようだ。と、アライは思った。
「生ふたつ」と、アライが代わりに云った。
「ウニの天ぷらがあるよ」と、チヅルが云った。
「海苔でウニを巻いて揚げるんだよ、お嬢さん」と、店員は云った。
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「アライってさぁ、変な仕事してるよな」と、チヅルが云った。
「今日の仕事のこと? あれは、あの男の写真をこっそり撮るのが目的なんだ。何に使われるかは知らない。一応、保険の調査ってことになってるが」
 アライはビールを飲んで、タバコに火をつけた。チヅルが煙そうに、手でパタパタと動かす。
 天ぷらが来た。海苔で黒く巻いてあるのがウニのようだった。ウニと海苔のコンビが絶妙だ。ビールに合う。

「マーティーとドクが、21日にやってくるんだよ。あたしたちの時代に」
「さっきの続きかよ」
「映画では、クルマは空を飛んでるし、みんな未来っぽい服着て歩いてるんだけど、あたしもアライも代わり映えしないね」
「未来は、概ね、分からない」
「そうね。オオムネ」
「昨日、オクムラから手紙が届いた。500ドルの小切手と一緒に」
「鍵? なんでドル?」
「コインロッカーの中見を預かってくれと書いてあった」
「やばそーね。ワクワクする」
「勝手にワクワクしないでくれ。どうしようか迷ってるんだ」
「迷っている風には見えないわ」
 チヅルは、そういうと鞄のポケットから鍵を出した。
「持って歩いてたのか」と、アライは驚いていった。
 なくしたらどうする気なんだ。
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「今日、必要になるような気がしてたんだ。勘よ。今からコインロッカーに行こうよ。実は、何が飛び出すか、想像して眠れなくなってたんだ」
 どうせ、ろくでもないものに決まっている。と、アライは思っていた。
 鞄は開けないで、ただ、保管していよう。アライは、鍵を手のひらでクルクルと転がしながら、そう考えていた。

 パンドラの箱は、開けない方がいいだろう。
<取材 ジュンイチ@八木商店 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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らんまん
住所 東京都品川区東大井5ー3ー1
電話 03ー5479ー0558
交通 JR京浜東北線大井町駅東口から徒歩1分
営業 17時から23時
定休日 日曜日
ひとり3千円くらいでした。
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         沙也加@すくもー
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
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掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
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盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス

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撮影 田原慎一

掛川『投票所』(静岡)男女出会いの店ってあるけれど。

本当に出会えるのか?IMG_3944

 リョウスケは、独身だった。
 45歳だけど、バツはなしだ。計算が苦手な公認会計士で、中肉中背のどこにでもいるような男だ。そろそろ結婚でも、と思ってから10年以上経って焦っていた。
 このまま、10年経ったら55歳独身になってしまうじゃないか。

「最短で3ヶ月でご結婚なされた方が大勢いらっしゃいます」と、結婚相談所の若い女性に云われ入会もした。
 あれから、二年である。
 どこかにいい出会いはないのだろうか?
 そんなリョウスケが仕事帰りにいっぱい飲むか、と珍しく本陣通りにやってきた。いつもは、判で押したように行きつけの店ばかりだけど、今日は、珍しく新しい店を開拓したくなったのだ。
 すると『男と女の出会い酒場』という看板を見つけた。
 『投票所』という焼き肉と海鮮の店だ。
 看板を見ながら、リョウスケは友だちのインチキ占い師に「いつもと変わったことをしなさい。そうすれば、出会いがあります」と云われたのを思い出していた。 そうか、これだったのか。と、リョウスケは思った。
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「ごめんなさい」
 しまった、ごめんくださいだ。新しい彼女がいるかもしれないと思うと、浮き足だってしまっている。ここは、堂々としなくちゃ。と、リョウスケは思った。
「ビールを」と、カウンターに座りオヤジに云う。
「ひとりかい」
 頑固そうなオヤジだった。
「女性客も来ますか?」
 店内は、リョウスケひとりだった。
「そりゃ来るさ。まぁ、飲んで待ってな。なにか食うかい?」
 リョウスケは大アサリを頼んだ。ビールに合いそうだ。
「今日の大アサリは上等だ」
 そう云うと、オヤジは大アサリを炭火で焼きだした。
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 しばらくすると、同年代くらいのサラリーマンが入って来た。なかなか、女性とは出会えないな。と、リョウスケは残念に思った。
 サラリーマンは、ビールとイイダコを注文した。イイダコも旨そうだ。
「兄さんひとりかい?」と、サラリーマンはネクタイを外しながら云った。黒縁眼鏡をかけて、口ひげを生やしている。スーツも腕時計も高級そうに見えた。
 リョウスケがひとりだと答えると、お近づきのシルシに、とリョウスケにもビールを、とスーツが云った。
「俺は初めてなんだよ。よく来るの」と、スーツが云った。
「僕も初めてです。イイダコ、よさそうですね」
「ああ、食べてよ」
 そう云うと、イイダコをひと串リョウスケに手渡した。
 で、ビールで乾杯! 
 相手がいると楽しい。と、リョウスケは思った。
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「近くなの?」と、スーツが訊いた。
「ええ、電車には乗りますが近くです」
「出会いの店って書いてるから、面白そうで入って来たんだよ」と、スーツは云った。
「あれ、僕もですよ」
「今夜は女性がいなくて、すみませんねぇ」
 大アサリを焼きながらオヤジが云った。
「兄さんと話すのも楽しいよ」
 スーツはそういうと、リョウスケの肩をポンと叩いた。
 少し酔っているらしいけど、気さくな人だなと思った。
「嫁さんはいるのかい?」と、スーツが訊いた。
「独身です」
「俺もだ、奇遇だねぇ」

 そう云うと、スーツはビールをお代わりした。「兄さんにも」とオヤジに云う。
「いえ、今度は僕がおごりますよ。オヤジさん、こっちにつけて」
「いいって、いいって」
 そう云うと、スーツはリョウスケの肩をポンポンと親しげに叩いた。
 大アサリが来た。
 リョウスケは、さっきのお返しにスーツにお裾分けをした。
「俺、アサイって云うんだ」と、スーツが自己紹介をした。
 すると、アサイはリョウスケの膝に手を置いて、耳元でささやくように云った。
「男が男を好きになってもいいよな」
<記事 大阪せんべろ探検隊 紙本櫻士@コピーライター>
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焼き肉・海鮮 投票所
住所 掛川市連雀2ー7
電話 090ー8959ー4016
交通 掛川駅から徒歩4分
営業 17時から24時
定休日 日曜日
二千円くらいでした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@元女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
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盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
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※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一

掛川『樹(いつき)』(静岡)掛川のおでん。地酒。

名物、掛川おでん。IMG_3895

 本陣通り『ひぐらし』の店主に、旨い掛川おでんがあると聞き、僕たちは『樹(いつき)』へ移動した。

 静岡おでんというと、出汁が黒いイメージだけど『樹』のおでんスープは、透き通っている。だし汁にイワシやサバを入れると黒くなるらしいが、掛川は違うらしい。
「上品なおでんですね」と、みーやんが女将に云うと、
「みんな静岡の黒い出汁を期待して来るのかな」と、女将は首を傾げて云った。

「大阪なんか、出汁にずぼっとチロリを突っ込んでます」と、僕が云った。
 天満の権兵衛である。
「そいつは乱暴だね」と、隣で飲んでいる法被姿がおじさんが云った。
 掛川祭の休憩で、いっぱい飲みに来ているという。おじさんのツレも同じデザインの法被を着ている。ふたりとも、陽に焼け顔を真っ赤にしていた。
「おじさんと同じものを」と、女優サナエが法被おじさんの前に並んでいる皿を見て云った。ハラスにおでん、ワカサギの天ぷらである。
「地元の人と同じモノを注文すれば、間違いないんや」
 そう云うと、サナエはビールをお代わりした。
 相変わらず、乱暴な芸風である。
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 僕は地酒が飲みたかったから、女将に選んでもらう。
 静岡の地酒、特別純米酒『国香』と純米大吟醸『葵天下』。比べてみると、吟醸の香りがする『葵天下』が好みだった。だけど、腰を据えて飲み出すと『国香』の方が、掛川おでんに合うように思えた。

「掛川の方言ってどんな感じなんですか?」と、僕は隣に座っている眼鏡をかけた法被おじさんに尋ねてみた。
「だら、とか、そうら」とか、云うね。
「大阪は、そうでんがな、とかいうんですか?」と、僕の対面に座っているカップルで飲んでる兄さんが云った。ふたりで静岡から来たらしい。
「いわへんです。明石家さんまくらいですわ。でも、あの人は奈良やし。あれは芸人言葉やね」と、サナエが説明した。
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 例外はある。
 僕が所属する北大阪商工会議所に、そうでんがな。違いまんがな。などと、連発している人物がいるのだ。船場あたりのジイサンが話しそうな訛である。枚方で、話している人は、たぶん、彼くらいだろう。オジイさん子なのかもしれない。
「K本さんだね」と、僕が云った。
「あれはちゃいますよ。ひとりで、でんがな、まんがな、云ってるだけです」
 『葵天下』を飲みながら、みーやんが云った。みーやんもこっちが好みだそうだ。
「掛川祭は、夜に盛り上がるから、これからですよ」と、眼鏡をかけた法被おじさんが云った。
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 山車が41台も出る。神社7社、41町あるからだそうだ。町が競って、山車を披露する。
「掛川の名物って何ですか?」と、みーやんが訊いた。
「さぁ、芋汁かなぁ。掛川は、報徳の町だから、外食をあまりしなかったんです。始末するんですよ。掛川の人たちは」と、おじさんが云った。
 二宮金次郎の唱えた『報徳』である。身の丈に合った生活を良しとする掛川の人たちは、外食が苦手なのかなぁ。金治郎は、掛川に関係の深い人物なのである。
「思い当たる節はあります」と、もうひとりの法被を着た年配のおじさんが云った。
「芋汁食いたいですね。もう、俺は芋汁の口になってます」と、みーやんが云った。
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 尋ねても派手な名物が、どうも掛川には見当たらない。誰に訊いても、芋汁かなぁ、くらい。でも、こうして町を歩いていると、ごろごろとありそうなのだ。
 おでんだって、十分、掛川名物だと思う。地元の人たちはさして気づいていないのか・・・。掛川大祭にしろ、三年に一度の大きなお祭りなのに、あまり知られていないように思う。不思議だった。
 せんべろ探検隊的には、掛川は興味深い街だ。ちょいと、腹ごしらえもでき、僕たちの探検は続くのだった。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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樹(いつき)
住所 掛川市連雀2ー7
電話 0537ー24ー9655(ひぐらしと共用)
交通 掛川駅から徒歩4分
営業 16時から23時
定休日 水曜日
ひとり二千円らくいでした。
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掛川『ひぐらし』(静岡)黒はんぺんと掛川大祭。

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「もう、三年分歩きました」
 と、掛川せんべろ隊長の川人さんが云った。
 セッタに法被を着て、顔は陽に焼け真っ黒である。掛川に着いて久しぶりに川人さんに会った時、別人かと思うくらい。
「昨日遅くまで飲んでて、倒れるように寝てました」と、川人さんが云った。
 ずいぶん疲れているようだった。

 毎年、10月第2週に開催される掛川祭で、山車と一緒に連日練り歩くと、終わった頃に別人になるらしい。特に今年は、三年に一度の掛川大祭で、9日から12日まで4日間、練り歩いている(すごいですね)。
 4日も祭りに没頭したら、次の週は何もできないんじゃないか、と思う。とはいえ祭りの間は、そんなこと忘れて大騒ぎである。ワッショイ! オッショイ! 掛川に着くと、街中にそんなオーラが漂っていた。
 掛川、来週、大丈夫なのか・・・。
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 川人さんは先月9月27日(日)枚方で開催された『千人の月見の宴』に、掛川から来てくれたのである。
「掛川祭りにも来てください。ものすごく盛り上がるんです」と、川人さんが会場で誘ってくれ、
「行きます。行きます」と、女優サナエが酔っ払って答え、僕とみーやんと3人でクルマを飛ばして、掛川大祭である。
 朝早くでたから、僕たちもちょいぐったり。
「掛川には、せんべろ屋があまりないんです」と云いながら、川人さんが案内してくれたのは、本陣通りにある『ひぐらし』である。
 狭い通りに個性ある小さな店が集まってできたエリアが本陣通りだ。北海道の函館の屋台村がちょうどこんな感じだったな、と僕は思い出していた。訊くと、北海道に点在する屋台村をモデルにしたと云う。そーなんだね。
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 通りに入ると、せんべろ屋がひしめいていた(たぶん)。
「めっちゃええやん」と、サナエが叫んだ。飲む気まんまんである。
 まず『ひぐらし』のカウンターに僕たちは4人で並んで座った。
 さぁ、と、キリッと冷えたビールで乾杯!
 旨い。のである。
「掛川らしいおつまみはありますか?」と、みーやんが店主に尋ねた。
「え、難しいなぁ」と、髭を生やした人なつこそうな若い店主が云った。
「黒はんぺんフライがあるで」と、サナエが云った。
「そりゃ、静岡の名物だ。イワシで黒いんだ。ちびまる子ちゃんが、駄菓子屋で食べてるおやつ」と、僕が云った。
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 ちびまる子ちゃんは、静岡の小学生だ。駄菓子屋で黒はんぺんやスジ肉を食べるシーンが出てくる。
「俺は、イカのわた焼き」と、みーやんが云った。
「それは掛川ちゃうやろ」と、サナエが云った。
「掛川の名物は何ですか?」と、僕は川人さんに訊いてみた。
「イモ汁かなぁ」
「地味な名物やん。ここイモ汁あるの」と、サナエが店主に訊くと、ないという。
「ちょっと、遠いけど旨い店があります。イモは自然薯なんですよ」と、川人さんが云う。
「じゃぁ、イカのわた焼き」と、みーやんが注文した。
「イカが食いてぇだけなんじゃないの」と、サナエがみーやんに突っ込んだ。
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 黒はんぺんフライが来た。ソースを一緒に出してくれたが、つけないで食べた方がいいと云う。じゃぁ、それでひとついだだく。
「めっちゃうまいやん。黒はんぺん。黒いし」と、サナエが云った。
「こっちでは、はんぺんって云うんです。もともと、はんぺんは黒かったから普通に、はんぺん」と、店主が云った。
「せんべろ屋あるやんか」と、サナエが川人さんに云った。
「地元にいると、よく分からなくて」
 ちょっと、と川人さんは携帯に電話をした。
「山車に戻ってまた来ます」と、すまなさそうに云うと、ビールを飲み干して小走りに姿を消した。
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「忙しそうですね」と、みーやんが云うと、
「そりゃそーだろーよ。まぁ、飲もう」と、サナエはビールをお代わりした。
 ペースが速すぎで、まずいかもしれない。と、僕とみーやんは思った。
「オススメの店はありますか?」と、僕は店主に尋ねた。
「すぐ、そこにイツキって店があります。そこがいいかなぁ」と、店主が云った。

 遠くから祭り囃子が聞こえていた。
 法被を着た人たちが、街中をうろうろしている。お面をつけた子どもたちが歩いている。でも、祭りはこれからだ。で、僕たちは探検を優先することに。
 まだまだ、奥が深いぞ、掛川せんべろ事情。なのである。
<案内 掛川せんべろ隊長 川人@伝える人 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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ひぐらし
住所 掛川市連雀2ー7
電話 0537ー24ー9655
交通 掛川駅から徒歩4分
営業 11時30分から15時 17時から23時
定休日 水曜日
ひとり千円ちょい。せんべろでした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@元女優 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス

※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一

香里園『フレッシュネスバーガー』(寝屋川)BRUTUSとハンバーガーとビール。

BURUTUSとかPOPEYEとか。151010_1827~002

 フレッシュネスバーガーでは、ビールが飲めるのがいい。
 ハンバーグも旨いけど、流れている空気がいい。80年代の日本人が憧れていたアメリカを感じる。その頃を思い出しながら、ハンバーガーをかじり雑誌を読んでビールを飲む。小幸福である。

 60年代、70年代って、何でもしっかり選ばないと自分らしい空間を作ることができなかった。気に入ったモノをそろえるには、お金も掛けなければならない。例えお金をかけたって、難しかったりもした。
 要するに、貧しかったのである。
 ところが80年代になると、若者はちょっとした工夫で心地よい音楽、ファッション、雑誌、食べ物、空間を手に入れることができるようになった。
 高度成長期も終わり、親たちが豊になったのだ。
 若者はみんな、得意になって自分の部屋を一変させたのが、80年代である。お金だってたいして掛からないしね。
 大滝詠一の曲がヒットしたのは、心地よい空間を音楽で空間を満たしたかったからだと思う。山下達郎も、松田聖子も、村上春樹、糸井重里も、YMOも、あの頃の空気感を演出する重要なアイテムだった。
 心地よい、未来がやってきたのである。
 雑誌なら、Hot-Dog PRESS、POPEYE、BRUTAUS、GORO。こうやって並べると、みんな横文字なんだと気づく。
 つまり、どこか日本人が考えるアメリカなんである。えーっと、つまりインチキのね。
151010_1823~001

 そんなことを考えながら、フレッシュネスバーガーで、僕はビールを飲んでいた。
 少し離れた場所に、ヘッドホンをしながら髪の長いスーツを着た女性がノートにレポートのようなものを書いている。黒い大きなバッグを横に置いて、レポートに没頭していた。彼女のテーブルには、コーヒーがひとつ。
 僕は、時々、彼女をぼんやり眺めている。
 天井では、大きな扇風機の羽根がゆっくりと回っていた。香里園店は、駅ナカにあるから、電車からはき出された人通りが店内から見ることが出来た。でも、誰も入ってこない。商品が、いささか高いからかもしれない。
 僕は、雑誌ラックからBRUTUSを取ってきて、パラパラとめくりながらビールを飲んでいた。今月の特集は、日本のワインである。「日本のワインは今、まさに成熟期を迎え飲み頃です」と、キャプションが踊っている。mono magazineは、ミッドセンチュリーの家具の特集だった。
 どうやら、どちらも80年代を過ごした読者層向けの雑誌になっているらしい。 この店のターゲットも、そうなのかもしれない。
 つまり、僕がここに居て心地いいのは、ターゲットに入っているからなのだろう。
151010_1826~001
 携帯が鳴った。
「いまどこにいる?」と、カメラマンの江藤くんだった。
「ハンバーガー屋でビール飲んでる」
「カラオケで盛り上がってるんだ。来いよ」
 携帯の向こうで、誰かが湘南乃風の『睡蓮花』を歌っているのが聞こえてきた。
 80年代から一気に、気分は平成である。なぜか、神経を逆なでされたような気がした。
「オマエを呼べって、みんなうるさいから俺が掛けてんだ。来いよ」
 そう云うと、江藤は電話を切った。どこでカラオケやっているのかも云わずに・・・。
 僕はビールを飲んで活字を読んでいたかった。レポートを書いていた女の子はいなくなり、代わりに若いサラリーマンが座って文庫本を読んでいた。
 携帯が鳴った。平成の江藤からだった。
<記事 大阪せんべろ探検隊 紙本櫻士@コピーライター>
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フレッシュネスバーガー 香里園店
住所 大阪府寝屋川市香里南之町19ー1
電話 072ー837ー0921
交通 香里園駅
営業 7時から22時
定休日 無休
だいたいせんべろ。
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大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
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         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
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掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
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全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
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※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一

枚方市『鳥将軍』(大阪)犬のツヨシに誘われて。

寄ってけよ。IMG_3745

 〆のラーメンでも食べて帰ろうか、と枚方の裏通りを歩いていると、
「焼き鳥食ってけよ」と、一匹の犬が声をかけてきた。
「柴犬かい?」と、僕が訊くと、
「そんなもんちゃいますよ。へへへ」と、笑う。
 雑種らしい。
 マクドナルドのような太い眉毛が愛嬌のある茶色い犬だった。

 鳥将軍という看板が出ていた。宮崎地鶏の店のようだ。暖簾の向こうで、店員がビールを運んでいるのが見えた。
「ここの犬なの?」
「犬だなんて失礼なヤツやな。ツヨシや」
「長渕とか?」
 店内に長渕剛のでかいポスターが貼ってあったからだ。
「そうや、自分ナガブチツヨシや」
 そう云うと、しっぽをちぎれそうなくらい振り、二度吠えた。
「飼い主がナガブチファンなんや」と、ツヨシが云った。
 でも、どう見ても長渕剛って、顔じゃない。お笑い系?
「ラーメン食べようと思っているんだ」
「ラーメンならここにあるで。お客さんや!」と、ツヨシは吠えるように云った。
IMG_3742
 店内は、炭火で焼ける鳥のいい匂いが漂っていた。
 僕は、ツヨシの近くのカウンターに座った。隣にはサラリーマンたちが二組。奥のテーブルにOL4人組がかしましく飲んでいた。ツヨシは、客たちに時々、声をかける。OLたちに、可愛い、なんて云われていい気になっているようだった。

「ムネ焼きでええか?」とツヨシが僕に云った。
 ずいぶん、偉そうだ。ツヨシが注文すると、店員たちがモクモクと仕事を始める。店長なのか?
「それと、鳥ユッケと、麦ロック」と、ツヨシが店員に吠えた。
「まだ、僕は注文してないよ」と、僕が云うと、
「細かいこと云ってたら友だちなくすで」と、ツヨシがしっぽを振りながら叫んだ。ツヨシの一声で、僕の注文が確定らしい。
 髭を生やした人間の店長は、ツヨシのいいなりのようだ。時々、ツヨシが軽口を叩くと、店員たちが笑った。
「宮崎地鶏は、串に刺さんと焼くんや。地鶏は歯ごたえがあって旨いねんで。おっと、ヨダレが出てきよった」、そう云うとツヨシは、前足でヨダレを拭いた。
IMG_3753
 鳥ユッケが来た。卵を箸でつぶしていただく。
「旨いやろ?」と、ツヨシが云った。
「少し静かにしろよ」と、人間の店長がツヨシに云った。
「何、眠たいこと云うてんねん。きっちり、焼かんと味がおちるで、しかし。兄さん、俺が都城に行ったとき、地鶏の鉄板焼きと鶏刺しだけで、勝負している店があってな、あそこは旨かったわ」と、ツヨシが云った。
「どうやって行くんだい?」と、僕がツヨシに尋ねた。
「クルマやな。飛行機は落ちるからかなんねん」
「気にしないでください。話半分やから」と、女の子の店員が云った。
 〆のラーメンを頼んだ。
「泡が合うで。シンプルな鳥スープのラーメンに、泡がオススメや」と、ツヨシが云った。
 ツヨシは、僕の代わりにスパークリング・ワインとラーメンを注文した。
「よく喋る犬ですね」と、僕は女の子の店員に云った。
「そうなの。でも、よく働くのよ」と、彼女がスパークリングワインをカウンターに置きながら云った。
「ツヨシや。犬、云うな」
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 ラーメンが来た。僕は、泡をひとくち飲んで、スープをレンゲですすった。ツヨシの云う通り、スープに泡がよく合う。
「どや」と、ツヨシが吠えた。
 僕は、人間の店長に「旨いよ」と告げると、ツヨシが代わりに「そやろ」返事をした。麺は固めで、僕の好みだ。スルスルと喉を通り、たちまち、僕は平らげてしまった。
 残ったスパークリングを飲み干し、
「ごちそうさま、帰るよ」と、僕は店員に告げた。
 ツヨシは何かが気になるのか、外を黙ってしばらく見ていた。どうしたの? と、声を掛けようとしたら、
「真っ直ぐ帰れよ」と、ツヨシに云われる。
 支払を済まし、僕は店をでた。空の月が欠けていた。もう、10月なんだ
な、と月を見ながら思った。
 パチンコ屋の角まで行き振り向くと、ツヨシが、何か言いたげに僕を見ていた。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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鳥将軍
住所 大阪府枚方市岡本町2ー12 野村ビル1F
電話 072ー846ー1611
交通 枚方市駅から徒歩2分
営業 17時から翌1時(日から木) 17時から翌2時(金・土)
定休日 無休
二千五百円くらいでした。
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掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
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浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
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全米せんべろ隊長 としゆき@カマス・ワシントン
盛岡せんべろ隊長 アキ@盛岡美人
土佐せんべろ隊長 エツコ@パラダイス

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撮影 田原慎一

北千住『千両』(東京)昭和50年より同じ値段。

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 北千住の『千両』に着くと、
「ねこちゃん元気?」と、チヅルが云った。
 チヅルが造った招き猫のドアストッパーである。ドアストッパーには大きすぎ、扱いにくい。どこか顔がチヅルに似ていた。

「鍵は、なくしてないだろうな」と、アライが云った。
「当たり前じゃない。持ってると、メシ奢ってもらえるもん」
「いま、持ってる?」
「隠してある」
「なんで」
「わけありの鍵なんでしょう?」
 アライは、黙って、ジッポウでハイライトに火をつけた。

「中落ち、葱とろが、昭和50年から同じ値段って書いてるよ。これって、昔から安いってこと?」
 店の壁に大きく『目玉商品』と張り紙があり、中落ち、葱とろ、350円と書いてった。
「たぶんだけど、いまの時代なら倍の700円ってとこかな。昭和50年頃だと山手線の初乗りが30円だった」
 チヅルは、生ビールをお代わりした。それと、中落ちと葱とろも。
「ずいぶん、詳しいのね」
 もちろんチヅルは生まれていない。遠い、昭和のおとぎ話くらいに思っているのかもしれない。
「国鉄に乗って、学習塾に通ってたからな。俺、中学受験したんだ。落ちたけど」
「ふーん」
 チヅルは、興味がないらしい。ずいぶん昔のことだし、おじさんの昔話にはつきあえないってことだろう。
 中落ちが来た。ひとくち食べるとちゃんと倍の値段の味がした。やるじゃないか、千両。
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「鍵のことなんだけさ」
 チヅルが言いかけたのを遮って、アライが話し始めた。
「感謝してる。黙って、隠し持っといてくれると嬉しい。ギャラも払うよ。わけありの友人が困ってて、預かっているんだ。で、面倒なやつらが欲しがってる。事務所を家捜ししそうな馬鹿どもだ」
「ふーん。面白そうだからいいけど、代わりに私の絵を高く買ってくれると嬉しいな」
「オーケー、事務所の壁に飾ろう」
 取引成立である。
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 三日前、刑事だと名乗る男が事務所を訪ねてきた。身分証明書を見せたから偽刑事じゃない。張という刑事だった。
「こいつを知っているか?」と、張は写真を見せて云った。
 オクムラの写真だった。
「知り合いだが、なにかあったのか?」
「まだ、なにも、元奥さんが亡くなって、姿を消してる。ただ、それだけだ。あんたは、オクムラに雇われた探偵だろう?」
「保険の調査員だ。探偵はやってない」
「どうでも、いい。今日は、俺ひとりできてる。ややこしいことにはしたくないんだ。やつの居所が知りたい。何か言ってなかったか?」
 アライは、いつものようにコーヒーを立てた。
「飲むかい?」
「ありがたいね」
 そう云うと、張はタバコの火をつけた。
「コーヒーには、タバコが必要なんだ」と、張が云った。
 マグカップにたっぷりコーヒーを入れ、アライは張に渡した。
「奥さん、他殺なのか?」
「さぁな、でも、オクムラが姿を消してる。親父さんが激怒しているらしい」
「とにかく、俺は知らない」
「たれ込みがあったんだ」
 鍵のことだった。ギャングたちも必死なんだろう。刑事を使って探りをいれているらしい。
「コーヒー旨かったよ。また来る。面倒を俺たちにかけるな」
 そう云うと、張は部屋を出て行った。
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「オトナの居酒屋って感じ」と、チヅルが云った。
 サカナが旨かった。20代のチヅルには、客層がオトナに見えるのだろう。おじさんばかりなのだ。
「アライのところで雇ってよ」
 チヅルはマールボロメンソールを吸いながら云った。バイト先の居酒屋で配っている派手なライターが、タバコの上に乗っていた。最近、昼のバイトも探していると云っていたのを思い出していた。俺のところは、ごめんである。とても、役立つようにも思えないし・・・。
「そんな余裕はない」
「鍵、捨てるよ」
 やりかねなかった。ここにも面倒なやつがひとり。
 結局、事務所の電話番に雇うことになった。壁の絵が出来上がるまでの限定でだ。
「契約成立!!」
 仕方なく、アライはチヅルと乾杯をした。やれやれ。
<取材 アラピー@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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千両
住所 東京都足立区千住2ー52
電話 03ー3870ー2415
交通 北千住駅北口から徒歩5分
営業 17時から24時
定休日 日・祝
ひとり二千円ちょい。
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撮影 田原慎一

香里園『サクラサク』(大阪)昭和というよりも。

一目会ったその日から。IMG_3708

 女優サナエから電話がかかってきた。
「反省会だから、サクサクに集合」
「なんの反省会?」
「今日の見合いの反省会に決まってるだろ」
 そう云うと、サナエは電話を切った。

 10月は見合い強化月間とサナエが云っていたから、早速、何回か見合いをしたのだろう。どうなったのかな、と、僕は電車でサクサクに急いだ。
 着くと、カウンターに7人の男たちが立って並んで飲んでいた。オーナーのミヤちゃんと若い女の子の店員ふたりで、忙しそうだ。ふたりとも白シャツを着ていた。

 テーブルで座って、サナエはハートランドを飲んでいた。
 珍しく白シャツに紺のスカートである。黒いヒールは、下ろしたてのようだった。そのままサクサクのカウンターに入れそうなファッションである。
「上から下まで、買ったばかりに見えるよ」と僕が云うと、
「急いで見合いしてきたから、買ったばかり」と、サナエが云った。
 棚にある大きな紙袋に、着ていた服と靴が一式入っているらしい。
「まるで、逃亡犯みたいだ」
「うっせーよ」
 そう云うと、サナエはハートランドをひとくち飲んだ。
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 僕も、サナエと同じハートランドを頼む。
「なんで目玉焼き食べてるの?」と、僕が訊いた。
「昔、親父と母親がデートした時、ハムエッグを食べたっていってたのを思い出したんや。メニューにあったから、なんとなく昭和のハムエッグを食べたくなって。ほら、赤ウインナーもあるし、メニューが昭和や」と、サナエが云った。
 昭和といっても、僕にはわたせせいぞうの昭和に見えた。なんとなく80年代の空気を感じる。

「見合いどうやったん?」
「それ、聞くの? 聞きたいの?」
「云わなくていい」
「眠たくなったんや。相手の会話が、ものすごく催眠術師のようにアタシを眠たくさせるねん。途中、洗面所で顔を洗って出直したくらいや」
 サナエはそう云うと、ぐっと冷酒を頼んだ。
「福山くんに、少しくらい似てた?」
「福山くんと言うよりも・・・」
 パンチでデートか! サナエ、そいつは古い。
「ひと目会ったその日から、恋の花咲くこともある。見知らぬあなたと、見知らぬあなたに、デートを取り持つ、パンチDEデート。あれ、冒頭、覚えてる」と、サナエが云った。
 司会の桂三枝と西川きよしが交互に云う、お決まりのセリフだった。
 相手の顔は中央で区切られていて視聴者にしか見えず、最後に、司会者が小さなのぞき穴から相手を見て、感想を云うのがお決まりの演出だ。
「どんな人が好きですか?」と、司会者(桂三枝)が訊くと、
「福山くん」と、女性が答える。すると三枝が覗いて、
「福山くんというよりも、バナナジュースという感じです」と、訳の分からない感想を云う。
 最後に、ご対面となり、ふたりで話し合い、付き合うかどうかを決める趣向だった。
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 みやちゃんがカウンターから、ビールを片手にテーブルに移動してきた。
「この格好なら、店員になれるよね」と、サナエのシャツを見て僕が云った。
「うちの娘いいでしょう。笑顔がぱっとして、店が華やぐの」と、みやちゃんが云った。
「スルーかよ」と、サナエが云うと、
 みやちゃんが、ふふふ、と笑った。
「あと、ふたり後から来るよ」と、サナエが云った。
「呼んだの?」と僕が云うと、
「当たり前だろ、反省会なんやから」と、サナエが云った。
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「会津せんべろ隊長は、ねるとん紅鯨団に出たらしいよ」と、僕が云った。
 『ねるとん紅鯨団』は、1987年から1994年まで続いたフジテレビの人気お見合い番組だ。司会はとんねるず。なので、ねるとん。
「隊長は、うまくいったの?」と、みやちゃんが訊いた。
「僕と付き合ってください、っていったら、ごめんなさい、だったらしい」
「見合いは、奥が深いんや」と、サナエが云った。
 見合いのプロが云うのだからそうなんだろう。
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 昭和に乱立していたお見合い番組がなくなったように思う。もはや、日本人は番組に頼らなくても、相手を見つけることが出来るようになったのかもしれない。
 どうだろう?
「みんな遅いなぁ」
 そう云うと、サナエはハートランドをお代わりした。
 反省会は、まだ、始まったばかり。サナエの見合いも、当分、続きそうだった。 もちろんせんべろ探検も、続くのだ。
<記事 大阪せんべろ探検隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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サクラサク
住所 大阪府寝屋川市香里南之町30ー1 第3林ビル1F
電話 072ー381ー8900
交通 京阪本線香里園駅から徒歩3分
営業 17時から23時30分
定休日 日曜日
ひとり2千円くらい。結構、飲みました。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
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         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー
下町せんべろ隊長 ジュンイチ@八木商店
      隊員 アラピー@キャンプ命
土浦せんべろ隊長 ススム@ミック
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命 弓子@キャベツ千切り
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撮影 田原慎一

浅草『ぽんぽこ』(東京)駄菓子屋のもんじゃ。

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 と、風楽さんが云った。
 風楽さんは、三代続く江戸っ子で浅草に住んでいる。話し方が落語家風で、なんとも面白い人物である。風楽さんと会うのは、久しぶりだった。
 うまいもんじゃで飲みたい、と僕が云うと、じゃぁ浅草の『ぽんぽこ』で飲もうや、となったのである。

 僕が、物書きやってると云うと、
「そりゃすげぇや、おいらなんか、文章からっきしダメで、もう、何年も書いてねぇからよ。ところで、なんで浅草にいるんだい? いまさら、観光ってのもねぇだろうし、そうだ、オンナかい。オンナだろ。そうか、いいねぇ〜。おいら野暮は云わねぇよ。ちょいと、電話でもしてここに呼べばいいんだよ。しみったれた店も華やぐってもんだ。電話しなよ。電話」
 そう云うと、風楽さんは扇子を出して、パタパタと扇いだ。どうも、忙しない。自分が連れてきて、しみったれた店もないだろう。
 どうしたら、こんな人物ができあがるんだろうと、不思議に思う。さすがに、着物に羽織りじゃないけど、今着てるジーンズにシャツより、ずっと似合いそうだった。
 久しぶりに風楽さんと飲みたかったから来た、と僕が云うと
「嬉しいこといってくれるねぇ。ちょいと、店員さん、もんじゃとビールふたつ。もんじゃはベビースターラーメンの入ったやつで、卵ぬきで」
 オススメの『下町もんじゃ』である。ベビースターと卵と書いてあるけど、卵ぬきが風楽さん流らしい。
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 店員が、もんじゃをさっと鉄板に広げた。焼けた鉄板から湯気がふわっと上がる。風楽さんがもんじゃ奉行だ。
「こうやって、ほら、端がパリッと焼けたとこが旨いんだよ。出汁は、ベビースターラーメンでさ。子どもの頃、駄菓子屋の店先で食ってたんだけど、あれもなくなったねぇ。目白の鬼子母神あたりの駄菓子屋にも、残っているのかい? 今はどうだろうねぇ。ありゃ古いらしいよ。日本最古の駄菓子屋だってぇじゃねぇか。お上が、店先で、もんじゃ焼いちゃいけねぇってんで、寂しくなっちまったねぇ。おっと、ビールが来ちゃったよ、先に乾杯だ。乾杯」
 鉄板で、もんじゃが泡立っていた。具が何もないもんじゃに、ベビースターラーメンを乗せて焼くのも、子どもたちの工夫だったのだろう。東京の子どもたちが駄菓子屋で食べた、チープな食べ物だけど、それぞれのこだわりもあるようだ。
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「これはこれでいいだけど、ドンっと腹にたまるやつもいきたいね。おいらたちは、オトナなんだしさ。しみったれた食い方してたら、笑われるよ。肉はあるかい? 何、鶏がある。アスパラもついてる? いいねぇ。じゃぁ、それを大盛りでお願いしようかね。あんたも、沢山食うだろう? そうか、食うかい。よしきた、そいつをドンとお願いして、チューハイもいただこうか」と、風楽さんは云った。
 もはや、僕には落語にしか聞こえない。
「風楽さんは、ずっと、そんな風なんですか?」
「落研時代から、ずっとこれさ。みんなも面白がってくれるし、おいらも話しやすいんだよ。直せねぇ方言みたいなもんさ。普通に喋れねぇのかい、って、今さらいわれても、だいたい、気持ち悪いじゃねぇか。おや、そこ、焦げたところが旨いんだ。ぐっといってくれ。店員さん、ビール、こちらお代わりだよ」
 風楽さんの仕事は、行政書士だった。書類さえきちんと作れば、話し方なんか落語風でいいんだろう。たまに、講師で呼ばれたりして、業界では人気者らしい。そりゃそーだろう。
「えー、いっぱいのお運び、まことに、ありがたいことでございます。士業ってぇと」とか、講師で話しているのが目に浮かぶようだった。
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「箱根の山は越えたことねぇけど、今度、大阪にも寄させてもらうよ。あっちは、てっちり、鯖の押し寿司、コナモン、祇園で、小股の切れ上がったいいおねーちゃんと飲みたいねぇ」
 もはや普通に話せない風楽さんが、可笑しい。
 大学時代の友人の消息を話したりと、あっという間に時間が過ぎていった。
 このまま別れるのも名残惜しく、もう一軒行こうや、となり、風楽さんとの浅草探検は続くのだった。
<取材 アラピー@キャンプ命 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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もんじゃ・お好み焼き ぽんぽこ
住所 東京都台東区浅草1ー16ー7 YUビル2F
電話 03ー5603ー4454
交通 地下鉄銀座線浅草駅より徒歩5分
   東部伊勢佐木線浅草駅よろ徒歩5分
   つくばエクスプレス浅草駅よろ徒歩3分
営業 12時から21時
定休日 火曜日
ひとり二千円いかないくらい。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
【全国で活躍するせんべろ隊員たち】
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
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