1999年の馬力食堂。IMG_2165

 ノストラダムスの大予言で、地球が滅亡すると言われてた1999年の7月頃、佐々木と馬力食堂でビールを飲んでいたのを覚えている。
 確か店の中央に、薄暗い小さな個室があって、そこでパスタとサラダを食べながらノストラダムスの話しをしたんだ。

「そろそろ滅亡だな」と、僕が云った。
「え?」と、友人の佐々木が云った。
「ノストラダムスだよ」
「ああ、詐欺師の」
「ノストラダムスが?」
「いや、やつはたんなる詩人や。関係者全員、詐欺師やな」
 そう云うと、佐々木はビールを飲んでお代わりをした。

「図書館で占いの本読んだことあるか?」と、佐々木は云った。
 あるような、ないような・・・。小学生の時、ノストラダムスの大予言を読んで怖かった記憶ならあったけど。
「図書館にある占いの本は、古い予言書が多いんや。1980年に出たヤツとか、その本が書かれた以前の占いは、バッチリ当たってるけど、その後は全部ハズレや」
 どういうことなんだろう? 僕は佐々木に尋ねた。
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「ええか、いま、俺が占い本を書くとする。阪神大震災も東日本大震災もソ連の崩壊も、俺は全部予言して当てることができるんや」
「そりゃそーやろ。知ってんねんから」
「その百発百中の俺が、未来を予言するんや。北朝鮮が崩壊するとか、富士山が爆発するとか」
「しそうやな」
「ところが、そんなもん吹き飛ばすような現実の地震とか、事件が起こる。富士山は爆発しないのに、や」
「未来は、わからない?」
「だいたい、わからん」
 結局、8月が来て、ノストラダムスは忘れられていった。
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 久しぶりに馬力食堂に入った。
 焼酎が全部半額と黒板に書かれていたのに、釣られてである。
 中央にあった、薄暗い小さな個室はなくなっていた。かわりに大きな囲炉裏が据えつけてある。岩魚が数本刺さっていた。
 僕は、佐藤のロックと岩魚を注文した。

「焼くのに時間がかかりますが」と、店主がすまなさそうに云った。
 もちろん、かまわない。美味しい焼酎を味わっていればいいのだ。
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「前に来たときと、店の印象が変わりましたね」と、僕が云った。
「3年くらい前ですか?」と、店主が岩魚を焼きながら云った。
 人のよさそうな丸顔のご主人だった。
「いえ、小さな個室があった時です」
「それは、オーナーが違う時ですね。馬力食堂じゃなかった時かもしれません」
「パスタとか焼きそばとか、唐揚げとか、若者向きの店だったと思います」
「その時のことは、わたしは知らないんです」

 岩魚が焼き上がった。僕は、佐藤をお代わりする。
 串を持ってかぶりつくと、いい塩加減の焦げた岩魚が口にひろがった。僕は子どもの頃、川遊びをして、河原で焼いて食べた岩魚を思い出していた。
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 メニューに幻の牛すじ焼きとあった。旨い牛すじがあって、惚れ込んだご主人が、なんとか頼み込んで仕入れているらしい。それも注文する。

 馬力食堂は、いつしか、こだわりの店になっていた。
 未来なんて分からない。佐々木の云う通りだった。
 身近なことすら分からない。
「未来なんて分からない」
 僕は、1999年7月にここにいた、佐々木に云った。
<記事 おおさかせんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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馬力食堂
住所 大阪府枚方市三栗1−1−12
電話 072−848−5688
交通 京阪本線御殿山駅より徒歩5分くらい
営業 17時30分から翌1時
二千円ちょとでした。美味しかったので。
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大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
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