浦和女子会は、楽し。11805655_875554695870396_814099280_n

 サヨコとまゆゆに会うと、たちまち学生時代の”あの頃”に戻ることができる。
 最近、ふさぎ込みがちだったカオリは、みんなと会うのを心待ちにしていた。
 小学生の息子も素直でいい子だ。職場結婚したパートナーは、いつも優しい。もう、10年以上一緒にいる。特に、トラブルがあるわけじゃない。
 喧嘩をすると2、3日口をきかないことがあるけど、みんなそんなものだろうとカオリは思っている。でも、ちょっぴり鬱だった。

 浦和駅につくとサヨコが先に来て待っていた。
 紺の花柄をあしらったワンピースと服に合わせた紺のコルク・サンダルを履いていた。カオリが手を振ると、ニッコリと笑って手を振り返した。
「久しぶり」
 サヨコの声を聞いて、カオリはほっとした。
 サヨコのiPhoneに、メールが来た。
「まゆゆ遅れるみたい。先に行っててだって」と、サヨコが云った。
「相変わらずだね」とカオリが云うと、
「いつものことさぁ」と、サヨコが云った。
 まゆゆは、たいてい遅れてやってくる。
「浦和なのに、海の家みたい」
 『鮮魚浜焼』と書かれた大きな看板を見上げて、カオリが云った。

 店に入ると、元気な女性店員が迎えてくれた。
「前に会ったことありますか?」と店員が訊くと、
「初めてだと思います」と、カオリが云った。
 店員につられて、カオリもハキハキとした声になっていた。
「あれ、あたしの勘違いでした。ごゆっくり」と、店員が云った。
 といっても、ビールケースに板を一枚置いただけの椅子である。長く座ると、おしりが痛くなりそう、とカオリは思った。
 席に着くと、サヨコが生ビールを2つ注文した。
 サヨコはお酒が大好きで、彼女もまた浦和女子会を楽しみにしていた。
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「職場に真っ黒な人がいてさぁ」と、カオリが云った。
 カオリは、東京の企業に勤めていた。
「イケメン?」
「そうじゃなくて、黒いんだよ。で、どうしてそんなに黒いの? って訊いてみたの」
「日焼けサロンとか?」
「自宅の庭で焼いているんだって、いまどき、紫外線浴びるなんてありえない」
「若いの?」
「太ったおじさん」
「ありえねー」
 生ビールが来た。ふたりで乾杯である。
「今日って、日本酒対決だよね」と、カオリが云った。
 サヨコが企画した対決だ。
「ビールはチェーサーだよ」と、サヨコがビールを飲んで云った。

 しばらくすると、
「久しぶり〜」と、まゆゆが来た。
 可愛いチェックのワンピースに、ピンクのスエードサンダル。ピンクは、彼女のトレードマークだった。学生時代と変わらない渚のバルコニーで待っていそうな雰囲気である。
 生ビールを追加し、サザエの壺焼きと、カンパチとマグロの刺身を注文した。
 サヨコは、早速、南部美人を。
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「菊池くん覚えてる?」と、まゆゆが云った。
「早稲田のラグビー部の菊池くん?」と、カオリが云った。
「ラグビー同好会だよ」
 まゆゆが訂正した。そう云えば、学生時代も同じように訂正していたのを、カオリは思い出した。つき合ってたんだと思う。たぶん。
 サザエの壺焼きが来た。磯のいい香りが漂う。まだ、熱々で触ると火傷しそうだ。イカ焼きも追加する。

「その菊池くんが、東京に来たからこの間、会ったんだ」と、まゆゆが云った。
「菊池くんて、徳島で公務員やってるんじゃなかった?」と、カオリが云った。
「かっこよかったよね。名前はなんだっけ?」と、サヨコが尋ねた。
「ユウタよ」と、まゆゆが云った。
「ちゃんと勝負ブラつけてた?」と、カオリが冗談めかして云った。
「そんなんじゃないよ。でもさ、ユウタ、田舎のおじさんになってたんだ」
 まゆゆはビールをひとくち飲んで云った。首をいくぶん傾げている。

「ガッカリ?」と、サヨコが云った。
「話しててつまんないの。こんな人だっけ? って」
「向こうだって、思ってるかもしれないじゃない」と、サヨコが云った。
「そりゃそーだけどさ、なんだか寂しいなぁって」と、まゆゆが云った。
 カオリとサヨコには、早稲田の学生だった菊池くんしか思い浮かばなかった。爽やかな80年代の男子大学生の菊池くんだ。そういえば、菊池くんも陽に焼けて真っ黒だったな。と、カオリは思い出していた。
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「カオリとサヨコの話しもしたよ。そしたら、また、みんなで会おうって」
「わたしはいいわ」と、サヨコが云った。
「結婚してるの?」とカオリが訊いた。
 バツイチらしい。
「あの頃の菊池くんなら会いたいけど、いまの"菊池さん"は、見ない方がよさそうね」とサヨコが云った。
 彼女は、いつもシニカルだった。
 そこが、彼女の魅力だったりする。自分にないものを補いながら、私たちはバランスよくつき合ってる。カオリは、そんな風に思っていた。
 学生時代の友だちの噂話をし、人には云えないよもやま話を一通りすると、カオリは心がいくぶん晴れたように思った。

 日本酒対決というほど飲まなかったけど、お盆明けにまた対決しよう、と約束して3人は店をでた。
 風のない、星がキレイな夜だった。
<取材 浦和せんべろ探検隊 記事 紙本櫻士@コピーライター>
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田子商店
住所 埼玉県さいたま市南区沼影1−6−19
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交通 JR埼京線武蔵浦和駅から徒歩2分
   JR武蔵野線武蔵浦和駅から徒歩2分
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ひとり2千円とちょっと
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年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
日本全国で巡礼する隊員たち。

大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
      隊員 サナエ@婚活中 みーやん@ギタリスト エマ@野菜ソムリエ c@ab
         かおりん@シャンボール ハラタク@じもてぃ ホソカネーゼ@らふぃね
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
      隊員 ひろみ@デザイナー
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浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
      隊員 サヨコ@ピアノ命 まゆゆ@ピンク命
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一