「焼き餃子は、中国人は食べないよ。あれは残り物だからね」
周さんが、そう云ったのを覚えている。残り物とは、どういうことだろう?
周さんは横浜中華街の華僑で、僕の古い友だちである。
肩書きは、怪しい料理研究家だ。久しぶりに横浜から来阪したので、高槻で会うことになった。ならばと、周さんと高槻せんべろ探検となった。
どこかに、いいせんべろ屋はないかえ。
僕たちは、せんべろ屋を探しに細い路地に入った。いいせんべろ屋は、うらぶれた路地に、ひっそりと営業していることが多いのだ。
「周さん、この店、せんべろ屋じゃないかな」
「中華街から来た私に、わざわざ大阪で中国居酒屋に、一番に案内するかい」と、周さんは笑顔で云った。周さんも楽しんでいるのである。
店名はひらがなで、はるぴん。
店に入ると、お客さんでいっぱいだった。
僕たちは店のカウンターに並んで座ると、紹興酒を注文した。対面に労働者風の男たちが5人座っている。ずいぶん酔ってるようだった。
女主人(たぶん)が、壺から紹興酒を注ぐ。小さな柄杓を使って、慎重にグラスに注いでいた。
なんだか、本格的じゃないか、はるぴん。
周さんと、まずは乾杯。水餃子とチャーシューをお願いする。目の前に盛ってあるナッツが美味しそうだったので、それもね。
「焼き餃子食べないって云ってたよね」と、僕は周さんに訊いた。
「餃子は、新年を祝う縁起のいい食べ物なんですよ。正月にみんなで餃子鍋でお祝いをした後、残った餃子を家に持ち帰るんです。それを正月休みに焼いて食べたから、残り物なんですよ。わざわざ、最初から残り物にして食べたりしません。例えば、日本にはお茶漬けがあります。残して冷えた飯をお湯で温めて食べるでしょう。似ているかもしれません」
周さんは、ナッツをつまんで食べ、紹興酒を飲んだ。
「タバコやめたの?」と僕が訊くと、
「そういうわけじゃないですけど、近頃、吸う気がしなくてね」と周さんが答えた。
老けたなぁ。と、周さんの横顔を見て思った。僕が20代の時、周さんとよく横浜で飲み歩いた。みんな若かったのだ。
水餃子が来た。
「そのまま食べてくださいね」と、女店主が云った。
まずは、ひとついただく。旨い。
はるぴんは、女主人と寡黙なおじさんのコックさんふたりで切り盛りしているようだった。カウンターにずらっと並んでいる客は、常連のようだった。おそらく地元の人気店なのだと思う。
「私のお爺さんが、中国で腹を空かせて旅してたことがあるんですよ。もう、お金があまりなくて、それでも何か食べようと料理屋に入ったんです。そこでね、餃子にするか麺にするか、さんざん迷って、餃子をお爺さんは選んだんです。すると、小さな餃子が少しだけ運ばれてきて、ガッカリしたそうです。だから、私の店の餃子は、でかいんです」
周さんの店は上野にある中華料理屋の老舗だ。日本で餃子を出した草分けらしい。確かに、周さんの餃子はでかくて美味しい。
チャーシューがやってきた。ここのチャーシューは、小さく切られて円形に盛ってある。はるぴん風なのだろうか? ほどよくアブラが乗った柔らかい肉だった。
紹興酒をと、僕たちはお代わりをした。
「周さん、次のせんべろ屋は、どんな店がいいですか?」
「オーシさんにお任せします。なんだか楽しいです。せんべろ探検って」と、周さんが云った。
周さんと僕は、紹興酒を飲み干すと、次の探検に向かった。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
はるぴん
住所 大阪府高槻市城北町2−14−6
電話 0726−75−0401
交通 阪急高槻市駅より徒歩2分
営業 17時から23時
定休日 日曜・祝日
ひとり二千円いかないくらいでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
日本全国で巡礼する隊員たち。
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
隊員 さなえ@婚活中 みーやん@ギタリスト えま@野菜ソムリエ
かおりん@シャンボール
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
隊員 ひろみ@デザイナー
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一
周さんが、そう云ったのを覚えている。残り物とは、どういうことだろう?
周さんは横浜中華街の華僑で、僕の古い友だちである。
肩書きは、怪しい料理研究家だ。久しぶりに横浜から来阪したので、高槻で会うことになった。ならばと、周さんと高槻せんべろ探検となった。
どこかに、いいせんべろ屋はないかえ。
僕たちは、せんべろ屋を探しに細い路地に入った。いいせんべろ屋は、うらぶれた路地に、ひっそりと営業していることが多いのだ。
「周さん、この店、せんべろ屋じゃないかな」
「中華街から来た私に、わざわざ大阪で中国居酒屋に、一番に案内するかい」と、周さんは笑顔で云った。周さんも楽しんでいるのである。
店名はひらがなで、はるぴん。
店に入ると、お客さんでいっぱいだった。
僕たちは店のカウンターに並んで座ると、紹興酒を注文した。対面に労働者風の男たちが5人座っている。ずいぶん酔ってるようだった。
女主人(たぶん)が、壺から紹興酒を注ぐ。小さな柄杓を使って、慎重にグラスに注いでいた。
なんだか、本格的じゃないか、はるぴん。
周さんと、まずは乾杯。水餃子とチャーシューをお願いする。目の前に盛ってあるナッツが美味しそうだったので、それもね。
「焼き餃子食べないって云ってたよね」と、僕は周さんに訊いた。
「餃子は、新年を祝う縁起のいい食べ物なんですよ。正月にみんなで餃子鍋でお祝いをした後、残った餃子を家に持ち帰るんです。それを正月休みに焼いて食べたから、残り物なんですよ。わざわざ、最初から残り物にして食べたりしません。例えば、日本にはお茶漬けがあります。残して冷えた飯をお湯で温めて食べるでしょう。似ているかもしれません」
周さんは、ナッツをつまんで食べ、紹興酒を飲んだ。
「タバコやめたの?」と僕が訊くと、
「そういうわけじゃないですけど、近頃、吸う気がしなくてね」と周さんが答えた。
老けたなぁ。と、周さんの横顔を見て思った。僕が20代の時、周さんとよく横浜で飲み歩いた。みんな若かったのだ。
水餃子が来た。
「そのまま食べてくださいね」と、女店主が云った。
まずは、ひとついただく。旨い。
はるぴんは、女主人と寡黙なおじさんのコックさんふたりで切り盛りしているようだった。カウンターにずらっと並んでいる客は、常連のようだった。おそらく地元の人気店なのだと思う。
「私のお爺さんが、中国で腹を空かせて旅してたことがあるんですよ。もう、お金があまりなくて、それでも何か食べようと料理屋に入ったんです。そこでね、餃子にするか麺にするか、さんざん迷って、餃子をお爺さんは選んだんです。すると、小さな餃子が少しだけ運ばれてきて、ガッカリしたそうです。だから、私の店の餃子は、でかいんです」
周さんの店は上野にある中華料理屋の老舗だ。日本で餃子を出した草分けらしい。確かに、周さんの餃子はでかくて美味しい。
チャーシューがやってきた。ここのチャーシューは、小さく切られて円形に盛ってある。はるぴん風なのだろうか? ほどよくアブラが乗った柔らかい肉だった。
紹興酒をと、僕たちはお代わりをした。
「周さん、次のせんべろ屋は、どんな店がいいですか?」
「オーシさんにお任せします。なんだか楽しいです。せんべろ探検って」と、周さんが云った。
周さんと僕は、紹興酒を飲み干すと、次の探検に向かった。
<記事 大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター>
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はるぴん
住所 大阪府高槻市城北町2−14−6
電話 0726−75−0401
交通 阪急高槻市駅より徒歩2分
営業 17時から23時
定休日 日曜・祝日
ひとり二千円いかないくらいでした。
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「ええ体してるやん。せんべろ隊に入らへんか?」
年齢・経験不問。お酒が飲めなくても安心して活動できます。
日本全国で巡礼する隊員たち。
大阪せんべろ隊長 紙本櫻士@コピーライター
隊員 さなえ@婚活中 みーやん@ギタリスト えま@野菜ソムリエ
かおりん@シャンボール
東京せんべろ隊長 にしやん@上々颱風
隊員 ひろみ@デザイナー
掛川せんべろ隊長 川人拓也@伝える人
会津せんべろ隊長 吉川@ジュニエコ100開催地だ!
浦和せんべろ隊長 かおりん@もつ命
※行け! って感じのせんべろモデルはmaiちゃんです。感謝!!!
撮影 田原慎一